民法改正「滞納家賃の請求権と時効」編 賃貸経営にどんな影響が?

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今回は、民法改正シリーズの第三弾としまして、「滞納家賃」について詳しく解説させていただきたいと思います。

前回までは、最もトラブルの多い敷金と原状回復についてお話させていただきましたが、ほとんどが判例に基づくルールの再確認という範囲であり、賃貸トラブルの解決のための基礎になる部分の整理でした。
ただ、世の中は賃貸経営だけがトラブルの温床なのではなく、金銭が関わる全てのものにおいてトラブルは存在します。

今回お話させていただく滞納家賃については、「債権」という大きな括り中にあるトラブル事由でもあります。
そこで、賃貸経営における家賃トラブルの事例と、今回の民法改正による影響を分かりやすく解説させていただきたいと思います。

実際に相談されている家賃滞納トラブルの事例

冒頭で申し上げました家賃の滞納については、一つの「債権」という形で考える必要があります。
債権、つまり、ある人の財産に対して請求を行う事ができる権利ですから、「家賃を支払ってもらう」という約束を履行してもらう権利を注意を払いながら追求していく必要があります。

では、実際に家賃を滞納されてしまっている不動産オーナー様の中には、どのような相談をされている方がいらっしゃるのか、具体例をご紹介させていただきます。

「経営しているアパートに知人を住まわせているが、家賃の滞納が6年以上ある。
知人という事もあって、これまで大目に見てきたが、さすがに6年の滞納は大きいため滞納家賃の請求をしたところ「5年経っているから時効である」と言われ払ってもらえない。」

参考:知恵袋
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14117106844

「現在の入居者が十分な収入があるにも関わらず、毎月、数日ほど延滞します。
口座引き落としを勧めても承諾を得られないため、退去の際に延滞利息の請求をしようと思っていますが、契約書には延滞金についての記載はありません。
この場合でも、延滞金の請求はできるのか、また、時効があるのか。
請求が可能なら、どのような金利で計算すべきでしょうか。」

参考:教えて!goo
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/6539312.html

上記の相談内容のポイントとなるのが「時効は成立するのか」「延滞金は請求できるのか」といったところになります。
では、今回の民法改正が、それらの問題に対してどのような影響があるのか見てみましょう。

滞納家賃の時効

定期金債権と定期給付債権

まず、家賃というものを債券という括りでどのように見ていくかが重要になりますが、家賃の言い方を変えると「定期金債権」「定期給付債権」というものに該当します。

至極簡単にご説明させていただくと、「定期金債権」は家賃を支払ってもらう権利、「定期給付債権」は実際に発生した家賃を支払ってもらう権利という違いがあります。
名前はかなり似ていますが、今回のお話のメインとなっている滞納家賃については定期給付債権としての考え方になります。

さて、これらの債権にも確かに時効が存在し、上記にご紹介させていただいた相談内容のような「時効だから払わらない!」という主張も一概に否定できるものでもないのです。

とはいえ、この滞納家賃の考え方が今回の民法改正によって変わり、不動産オーナー様が泣き寝入りしなければいけない事態を避けられる可能性が出てきました。
では、これらがどのように変わるのかという点ですが、新旧を対照して見てみましょう。

定期金債権の変更点

旧)1回目の弁済の日から20年間、若しくは最後の弁済の日から10年
新)権利を行使できると知った日から10年、または権利を行使できる日から20年

定期給付債権

旧)権利を行使できる日から5年
新)権利を行使できることを知った日から5年、若しくは権利を行使できる日から10年

少々難しい事を言っているようにも思えますが、見ようによっては「言い方が分かりやすくなっただけ?」という印象を受けた方もいらっしゃるかと思います。
そもそも、「分かりやすくしよう」という意図もあった民法改正ですが、滞納家賃については定期給付債権として考える必要があります。

つまり、家賃の滞納が発生したときから10年、「滞納された!」と事実を知ってから5年は滞納家賃を請求できる権利があるのが定期給付債権なのですが、実は今回の民法改正で、この「定期給付債権」の条文については削除され、職業などに関わらず、上記の内容で統一される事となりました。

尚、これまでは「権利を行使できる日から」とザックリと決められていたので、貸主に追い風となる変更だと言えるでしょう。
ただ、逆に言うと「滞納されている事を知っているなら、少なくとも5年以内には請求しなさい」とも捉える事ができますので、その点は肝に銘じるべきかもしれません。

滞納家賃に対する延滞金

家賃滞納のトラブル事例にもありました、「延滞利息は請求できるか」という問いですが、結論から申し上げますと、請求は可能です。

ただ、今回の民法改正により、延滞利息については以下のように改められました。

民法改正による延滞利息の変更点

利息について意思表示がない時は、その利率は法定利率によるものする。
法定利率は年3%とする。
利率は3年を1期として、1期ごとに変動するものとする。

つまり、賃貸契約の中で「延滞したら年率〇%の延滞金を請求しますよ」という文言がない限りは、年3%で計算して請求しなさいという決まりになったということです。
これまでは年5%だったものが、3%になったので、数字だけ見ればなんだか借主有利のように見えますが、そもそも、延滞金についてはほとんどの賃貸契約で延滞利率を定めているかと思いますので、さほど大きな影響があるとは言えないかもしれません。

家賃滞納には毅然とした対応を

ここまで、民法改正における滞納家賃の時効と延滞金についてご説明させていただきました。
定期金債権と定期給付債権の部分については少々難しいかもしれませんが、滞納家賃については「権利を行使できる時から10年、権利を行使できると知ってから5年」という風に一律で考えていただければ差し支えありません。

これまで、職業別で時効の期日が違っていたため、何かと不公平だと言われていましたが、今回の改正により、1年ほどしかなかった飲食店などの債権が5年に延長になったことで、巷では話題になることも多いようです。

家賃が滞納された場合の対応

ただ、気を付けるべきは、家賃が滞納されてからの対応についてです。

例えば、ようやく滞納家賃についての話し合いの場が持てたとして、それが滞納発生から4年11カ月目という場合、残り1か月しか猶予がないように思えますが、「協議による時効の完成猶予」と言って、「協議を行うという合意が書面でされた場合は、1年を経過するまでは時効が完成しない」という決まりも作られました。

つまり、ここまでギリギリの期間になって焦らないようにするには、早めの対処が大事だということになります。
不動産オーナー様の判断や、その時々の状況によっては「1~2か月くらいは大目に見よう」というケースもあるかと思います。
1か月分の家賃というと、すぐに手に入るような額でもありませんので、1か月でも滞納があったなら、早めに対処されることをオススメ致します。

筆者の知り得るケースでは、「今回支払う家賃を先月の滞納分としてください。今月分はお金が出来次第支払います。」という事を何カ月も続けられてしまったというものもありました。
この件は、管理会社や司法書士が間に入る事で裁判にまでは至りませんでしたが、もしこれが5年も続いたとしたら、所詮口約束という事で「5年前の家賃は時効です」ということになりかねません。

滞納された家賃を代替するものは敷金くらいなものです。
話し合いが必要なケースがほとんどである家賃滞納については、毅然とした対応が求められます。

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