2017.08.15

民法改正「修繕と原状回復、家賃減額」編 賃貸経営にどんな影響が?

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シリーズとして解説をさせていただいている「民法改正」についてですが、今回は「修繕義務と原状回復」について、そして「家賃の減額」についてです。

これまで判例に沿った判断、そして国土交通省のガイドラインに沿って判断されてきた修繕義務と原状回復についてですが、しっかりと法律がなかったため多くのトラブルの元になってきました。
そんな修繕と原状回復について、大きく変わったことはないものの、今回の民法改正において明確になった部分があります。

そこで、果たしてどんな内容が決まったのか、そして今後の賃貸事情にどのような影響がありそうなのかという事を解説させていただきたいと思います。

修繕についての義務が明確化

前回は「敷金」についてお話させていただきましたが、「家賃の滞納があった場合は敷金から差し引いて良い」といった内容が明文化されたという内容でした。

その際、「特約」が契約内容にあれば、修繕費に敷金を充てる事ができる可能性があるともお話させていただきました。
つまり、今回の民法改正による原状回復や修繕義務について「修繕費は敷金から差し引いて良い」と決まったわけではないという事は覚えておいた方が良いでしょう。

そもそも、賃貸人の「修繕費は敷金から引ける」という認識と、賃借人の「敷金は基本的に返還されるもの」という二律背反の考えがあったためトラブルになるケースが多かったとも言えるのですが、今回の民法改正では、「賃貸人としての修繕義務」「賃借人としての修繕義務」が明確になりました。

では実際に、修繕と原状回復についてどのような内容に決まったのか見てみましょう。

賃貸人の義務

まず、賃貸人である貸主の修繕義務についてです。

結論から申し上げますと、貸主は賃貸物、つまり物件を貸すときは、しっかり使用できる状態に修繕する義務があるということが決められました。

身近なもので例えるなら、「お金と引き換えに自転車を貸すなら、パンクもチェーンの外れもない、ちゃんと乗る事ができる状態にしてから貸しなさい」という事です。

しかもこれは、「義務」として明確化されたものですので、借主から「安心して住めるとは言い難い!」と言われないように修繕する必要があると考えた方が良いでしょう。

しかしながら、例外があります。
これも今まで同様なので大きな変化ではありませんが、「賃借人の責めに帰すべき事由によっては、この限りではない」という条文も加わりました。
つまり、借主が破損させた、汚損したというケースにおいては、貸主であるオーナー負担ではなく、借主が修繕しなさいということが明記される事となりました。

賃借人の義務

貸主の義務については以上のとおりですが、借主である賃借人の修繕義務については少々細かく明文化されていますので、できるだけ分かりやすく解説させていただきます。
まず、決定したのは以下のようなものです。

借主が、賃借物を受け取った後(つまり物件を借りた後)に生じた損傷は、賃借物を返すとき(引越しをするとき)に原状回復する義務を負う。
通常の使用で生じた損耗や経年劣化については原状回復義務を負わない。
その他、損傷が借主の責任ではない場合も同様。
賃貸契約が終了するときには、契約時には無かった物も収去する義務を負う。
借用物から分離できない、または分離するのに大きな費用がかかる場合は収去の義務を負わない。

かなり噛み砕いてご説明させていただいたつもりですが、どうしても難しくなります。
もっと分かりやすく言い換えるなら「借主は賃貸契約を解約するときに自分で壊したり汚した部分があるなら、最初の状態に直しなさい。」「取り外せなくなったとか、多額の費用がかかるものは別として、自分で物件に取り付けたものは、退去の際に一緒に持っていきなさい。」という事を言っているのです。

損傷や汚損の部分については、よく聞く話ですので多少なり馴染みもあるかと思いますが、収去義務については分かりづらいと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

これはつまり、特殊なエアコンを取り付けた(あまりないかと思いますが)、壁に色を塗った、キッチンを対面式にしたなど、自身で取り外せないようなものは取り外す義務はありませんという事を言っているのです。

ただもちろん、自分の荷物を物件の中に置いていくのは収去義務違反になります。
ただし、収去できない、つまり取り外せないようなものを賃貸物件に取り付けたという事であれば収去義務はないものの、当然、修繕義務は負うものと考えて良いでしょう。

賃借人による修繕の権利

貸主と借主の修繕義務について解説させていただきましたが、今度は借主の修繕の権利についてです。

「修繕なんて費用もかかるし自分で行いたくない」という借主の方がほとんどかと思います。
ただ、貸主が修繕義務を怠っていて、「雨漏りが酷い」「立て付けが悪すぎて害虫が入る」「床が抜けそうだ」などの事由があれば、自分で修繕できるという事が明確になりました。

ただし、借主が勝手に修繕してしまうのではなく、事前に「修繕が必要である旨を貸主に通知」をしたうえで、それでも貸主が修繕をしないといったケースに限られます。
尚、緊急の場合についてはその限りではなく、自分の判断で修繕をすることができるとされています。

物件の通常使用ができない事による家賃減額

最後に、賃貸物件が通常どおり使用できない場合についてです。
今回の改正では「賃借物の一部が滅失、その他自由により使用できなくなった場合、それが賃借人の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、賃料をその割合に応じて減額されるものとする」という条文が加わりました。

つまり、賃貸物件そのものや物件の設備などが、当初の予定と違って、使用できない状態となったら賃料は減額されるのが当然という事を言っています。

これは、東日本大震災において、既に使用できなくなった物件であるにも関わらず賃料を請求されたなどのケースもあったことから検討されたものとされていますが、条文にある「賃借物の一部」という部分がどの範囲に及ぶのかまでは決められていません。
今後の賃貸契約については、これによるトラブルを防ぐために「天井のスピーカーは使用できないが、家賃は下げない」などの特約を付ける必要がありそうです。

修繕や原状回復への考え方

冒頭でも申し上げましたが、今回の民法改正による賃貸契約に関わるものは変更というよりも、これまでの判例のまとめのようなものです。
「法で決まっていないのだから」という理由でトラブルが絶えなかったために民法として明文化されたのであり、「これで貸主が有利!」「借主が完全に守られた!」というものではありません。

特に、修繕義務や賃料減額について、「どこまでが自然損耗」「自由に使えない部分とはどの程度か」というところは今後も争点になりそうです。
とはいえ、「特約を付けてはならない」という決まりができたわけではありませんし、むしろ、細かに定められない部分については未然にトラブルを防ぐために特約を付ける事は今後も必要になるでしょう。

昨今では、入居前に破損や汚損のある箇所を撮影して保存する、若しくは予め管理会社に箇条書きにして知らせておくなどの方法で少しでもトラブルを防ごうとする動きもあります。
民法改正という事実に慌てる事なく、これまで同様に、契約内容の確認と特約による事前承諾を得るということをしっかり行う事で、トラブルは最小限に抑えられると言えるのではないでしょうか。

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