意外と身近な賃貸トラブル事例集~騒音編~

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賃貸トラブル3回目となります今回は「騒音」のトラブルについてです。
実際のトラブルの事例と、不動産オーナー様としてどのような対応をすべきかまとめてみました。

騒音トラブルは時に、訴訟問題になる事もありますので、これまであまり騒音問題に関わったことのないオーナー様は、この機会に騒音問題の対策について考えてみてはいかがでしょうか。

相談の多い騒音トラブルの事例

まず最初に、賃貸経営における騒音問題は具体的にどのようなものがあるのか見てみましょう。

階下の住人による生活音への苦情

建物の構造が原因であることも多いのですが、普通に暮らしていても歩く音やドアの開閉音、場合によっては話し声すら階下に響いてしまう事があります。
仕方ない事ではありますが、悪意の全くない音であっても、過敏な住人にとっては雑音に他ならないと感じる方もいらっしゃるため、普段から生活音が他の部屋へ響いているのではないかということに配慮するよう呼びかける必要があるかもしれません。

ペットの騒音

ペット可にしている物件ですと、ペットに関するニオイ、騒音などはトラブルの原因になりやすいものです。
契約前に、ペットの鳴き声には十分に注意を促し、場合によっては契約解除要件となる事を伝える事で、飼い主として最低限のしつけを行ってもらう必要があります。

【関連記事】意外と身近な賃貸トラブル事例集~ペット編~

夜中にお酒を飲んで騒ぐ

昨今では、賃貸の空き室率が高まっているという事もあり、単身者同士の共同生活、つまりシェアハウスとしての契約に承諾している不動産オーナー様も増えています。
ここで懸念されるのが、友人同士が集まって宴会を始めてしまう事です。
不動産オーナー様にとって、人が集まってお酒を飲んだり食事会を開くことはやぶさかではないかもしれませんが、他の住人にとって、お酒の勢いで騒がれることは迷惑にしかなりません。
それが人が寝静まる時間に及ぶようですと、場合によっては警察沙汰になる事もあります。

楽器の演奏

単身者だけではなく、ファミリー世帯でも物心ついた頃のお子さんや趣味で楽器演奏をされる方は少なくないかと思います。
筆者の実体験でも、楽器不可の物件であるにも関わらず、「これからスタジオなんで」と言いながらギターを持って物件の内覧にいらしたお客様もいらっしゃいました。
音の性質上、楽器の低音域というのはいくら防音対策をしても防げませんので、不動産オーナー様に至っては、騒音トラブルを懸念されるのであれば、楽器演奏を不可として入居審査や重説の際にしっかり説明をしていく必要があります。

所有物件外の騒音

所有している物件で、いくら騒音トラブルを未然に防ぐ努力をしていても、外からの騒音問題は完全に防ぐことは難しいでしょう。
公園近くの物件なら、夜中に人が集まって騒ぐこともあるでしょうし、飲食店や工業施設が近所にあったり、宗教施設が近くにあると祝詞、歌、打楽器の音などが連日聞こえてくるという事もあるでしょう。
お祭りなどの一時的なものであれば許容範囲かもしれませんが、常識の範囲を超えた外部からの騒音トラブルは、賃貸経営でも対応が難しい一つと言えるでしょう。

クレーマー

最初に挙げた、普通の生活音が騒音トラブルに発展するケースに近いものですが、神経質すぎる住人にも注意が必要です。
明らかに防音対策を行っているにも関わらず、他の部屋から少しでも音が聞こえるとすぐに管理会社に連絡を入れるような人もいます。
対処方法については後ほど解説させていただきますが、騒音を訴える人と、防音をしているという主張をする側の間に入って平等な判断をしていく必要があるため、こちらも難しい判断や対応が求められます。

不動産オーナー側としての対処方法

さて、実際に起こっている賃貸経営における騒音トラブルですが、これらには「事前の対策」と「事象が発生してからの対応」の両面で対応を考えていく必要があります。
まず、事前に行える対応を見てみましょう。

室内の防音対策を実施する

騒音トラブルを少しでも軽減するためには、やはり室内の防音や吸音の対策を施しておくのが良いでしょう。
これは、実際に他の部屋に響く音を軽減するための対策でもありますが、「防音対策をしています」という貸主としての努力を示すことは、トラブルの際の貸主の主張として有効です。

過去のトラブル事例の中には「いくら管理会社に相談しても相手にしてもらえなかった」ということで、住人による訴訟が起きたケースもありますから、それらを未然に防ぐための策でもあると考えると良いでしょう。

入居審査や契約時にしっかり説明を行う

騒音トラブル事例でもお話させていただきましたが、楽器不可の物件に楽器を持ち込む方は必ずいらっしゃいます。
「楽器はあるが演奏しない」という方もいらっしゃいますので、判断の難しいところですが、騒音トラブルが訴訟問題に発展する場合に、契約解除が争点となるケースは少なくありませんので、騒音の度合いによっては契約解除要件として扱う旨は契約前にしっかり説明を行った方が良いでしょう。

とはいえ、こういった事前の対策を行っていても、借主の入居後のことまで完全に制限する事は難しいものです。
実際に騒音トラブルが起きてしまったら、どのような対処が必要になるかも併せて確認しておきましょう。

間接的な注意を行う

もし住人から騒音に対する苦情が入った場合に、ダイレクトにそのトラブルの主のところに注意しに向かうのは少々危険です。

「こちらは普通に生活しているだけなのに、建物の構造が悪いのではないか!」

こんな風に言い返されてしまうのがオチでしょう。
まずは誰という事もなく、共有部の掲示板などでお知らせとして、騒音に関する苦情が入っているという掲示で注意を促したり、同内容のチラシを投函するなどして様子を見る事から始めましょう。

話し合いによる和解を促す

間接的に注意を行っても、我関せずで全く効果の無い場合もあります。
この場合、トラブルの元になっている住人の元に向かい、管理会社、または不動産オーナー様から直接注意を促す必要が出てきます。

この場合、争う姿勢で注意をするのではなく、円満な解決に向けた話し合いが必要であるという事を伝えることで、その場で解決する事もあります。

そもそも、面倒ごとに発展させることは誰しも嫌がりますから、「話し合いをしましょう」という時点で、双方で一定の譲歩をしてくれる可能性も考えられます。

騒音の証拠を集める

上記までの対応を行っても、全く改善や解決が見えない場合、訴訟問題に発展する可能性が出てきます。

この場合、貸主としての対応をどこまで行ったか、実際の騒音の程度、対する苦情の主の言い分の録音や書面化といった証拠集めを行った方が良いでしょう。

先ほどご紹介したトラブル事例にあった、苦情の主がクレーマーの場合、通常に聞こえる音ですら騒音として苦情を申し立てる事があります。
この場合、騒音計などを使って音の程度を数値化する事で訴訟となった時の一つの判断材料となります。

警察に介入してもらう

「警察=トラブルの解決人」ではありませんので、安易に警察に頼る事は思わぬトラブルを引き起こす可能性もありますので、最終手段の一つだと考えましょう。

ただ、明らかに異常な怒鳴り声や子供の泣き声、近隣住宅からの大きな騒音に悩む場合は警察に相談せざるを得ない事もあります。
そもそも警察も民事不介入ということで動いてくれないケースがほとんどですから、明らかな異常でない場合は上記までの内々の対処が必要であると考えましょう。

騒音トラブルに対抗する法的根拠は?

ここまで、騒音トラブルの事例と、対処方法についてお話させていただきましたが、音の聞こえ方や感じ方は人それぞれですから、トラブルに対して一線引いて判断をするのは非常に難しい事です。

ただし、法的な根拠や判断基準が全くないわけではありません。
賃貸経営における、貸主と借主には以下のような義務があります。

貸主の義務

「貸主は賃貸借契約において、借主が賃料を払う事で、物件の使用や収益をさせる事を約束する義務がある。」

借主の義務

「借主は、物件の性質によって定まった用法に従って、物件の使用及び収益をしなければならない。守られない場合は、貸主は契約の解除をすることができる。」

つまり、貸主には「その物件を安心して使ってもらえるようにする義務」借主には「その物件のルールに沿った使用をする義務」が民法で定められています。
これらを怠ると、不法行為とみなされて損害賠償を請求される可能性があるという事です。

では、その「安心して使ってもらえる」という判断をするには、何が有効な材料になるのでしょうか。

それが、「<不動産オーナー側としての対処方法>」でもお伝えしました、騒音計による実際の音の計測です。
もう少し詳しく申し上げますと、これまでの騒音に対する「受忍限度」を超えているかどうかが重要なのです。
受忍限度とは「音量」「騒音の期間や時間帯」「騒音対する対処」などを総合的に判断して「これは普通の生活では我慢できないだろう」ということの上限の事を指しますが、これまでの騒音問題に対するトラブルの判例には、この受忍限度や音の大きさが争点となっている事が非常に多いのです。

尚、音の大きさについては環境省で明示している以下のような目安があります。

昼間:55デシベル以下
夜間:45デシベル以下
※おおむね、住居を主とする地域の場合

参考:騒音に係る環境基準について

上記の基準は訴訟の際にも参考となっているところがあり、一般的な洗濯機や掃除機ですら稼働させると60デシベルを超えますので、やはり夜間に洗濯機を回したり、掃除機をかける行為は迷惑行為に十分なり得るものと考えて、入居者に注意を促すと良いでしょう。

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