登記簿謄本の読み方、見方を丁寧に解説。不動産取引に必須!
登記簿謄本は、国民の財産保護や不動産取引の円滑化には必須のものであるという事を前回解説させていただきました。
その中で、登記簿の内容は「個人情報にあたる」とも解説させていただきましたが、実際のところ、公に開示されるべき内容であるという事から、誰でも簡単に閲覧できるようになっています。
前回記事:登記簿謄本の意味と役割を解説。不動産取引には必須!
では実際に、登記簿にはどのような記載があるのでしょうか。
これまでに登記簿を見た事があっても、いまいちその内容や意味が分からないと言った方もいらっしゃるかと思いますので、今回は登記簿に記載されていることが何を意味しているのかといったところを解説させていただきます。
目次
登記事項証明書「表題部」とは
不動産の登記簿謄本は大きく分けて4つの内容で構成されています。
「権利部(甲区)」
「権利部(乙区)」
「共同担保目録」
ここではまず、表題部から見ていきましょう。
登記簿謄本の表題部
実は単なる項目のタイトルだけのように思われるかもしれませんが、「表題部」という文字の横に「土地の表示」「主である建物の表示」「一棟の建物の表示」といったような記載がされ、その登記簿が土地と建物、区分所有のどれにあたるものなのかという区別ができるようになっています。
登記簿謄本の所在、家屋番号、建物の名称
ここには、その不動産のある住所が記載されます。
「家屋番号」というのは、その土地にある建物に付けられる番号です。
仮に「北南県西市東町1丁目1番地1」という架空の住所があった場合、「1番地1」というのが家屋番号となり、同じ敷地内に、別の建物があった場合は「1番地1の2」という番号が家屋番号ということになります。
マンションの場合は、家屋番号の欄が「建物の名称」という項目に変わります。
登記簿謄本の地番、地目、地積(土地)、原因及びその日付
先ほどの家屋番号と「地番」は密接な関係にあります。
例に挙げた「北南県西市東町1丁目1番地1」という所在地であれば、やはり「1番地1」が地番にあたり、実は家屋番号とは、この地番をそのまま建物の番号として付与しているものなのです。
「地目」はその土地が宅地なのか山林なのか、はたまた畑なのか雑種地なのかといった種類が記載されます。
そして「地積」ですが、これはその土地の面積を指します。
最後に「原因及びその日付」という欄ですが、ここにはその土地に何か変更があった際に記載がされる場所で、例えば、土地が分筆(一つの土地を分割して分ける事)した場合や、地目が変更された場合などに記載される特記事項と捉えていただければ問題ないでしょう。
登記簿謄本の種類、構造、床面積、原因及びその日付(建物)
同じ表題部も、土地の登記簿なのか建物に関する登記簿なのかで記載項目が変わります。
まず、建物の登記簿で記載される「種類」ですが、要はその建物の種類です。
主なところで、居宅、事務所、店舗、車庫などが記載されます。
そして「構造」です。
ここは建物の構造ですから、「木造かわらぶき2階建」や「鉄筋コンクリート造陸屋根三階建」といった記載がされます。
床面積は言うまでもなく、その建物の床面積を指しますが、2階建て以上の場合は各階の床面積がそれぞれ表示されます。
建物に関する登記簿の場合にも「原因及びその日付」がありますが、やはり建物に何かしらの変更があった場合に記載される項目で、一般的なところでは「平成〇年〇月○日 新築」ですとか、「平成〇年〇月○日 増築」といった記載がされます。
登記簿謄本の所有者
表題部の最後は、所有者の住所、氏名が記載されます。
登記事項証明書「権利部(甲区)(乙区)」とは
表題部だけでも、その不動産に関する様々な事実確認ができることがお分かりいただけたかと思いますが、権利部は更に詳しい、その不動産の歴史のようなものが確認できます。
また、権利部は「甲区」と「乙区」で分かれていますが、「甲区」は所有権に関する事項、「乙区」はそれ以外の権利に関する事項が記載されるようになっています。
順位番号
順位番号と聞くと、何か所有権の優先度を表すかのように思えますが、これは単なる時間的な順番を追って付与される番号です。
とはいえ、1番が最初に登記された内容を指すのであれば、その後は2番3番4番…と、権利関係に変更がある都度、記載が増えていく事項ですので、時系列を確認する際には目安として確認すべき項目と言えるでしょう。
登記の目的
ここには、その登記がなされた理由が記載されます。
甲区の場合は主に「所有権保存」「所有権移転」「所有権仮登記」といったものがよく目にする事項ですが、稀に「破産」や「差押」といったことが記載されることを目にすることもあります。
また、乙区の場合は主に「抵当権」「根抵当権」「地上権」「賃借権」といったものが記載され、上記にも申し上げましたとおり、その不動産に関する所有権以外の権利が設定されていたり、その権利に変更がなされた場合に記載される場所です。
受付年月日、受付番号
「受付年月日」はその名のとおり、登記申請がされた日付を指します。
「受付番号」については、単なる手続き上の番号と思われがちですが、実際に登記官が手続きを進める中で順番というものが存在するため、その手続きの順番に沿って付けられる通し番号となります。
権利者その他の事項
ここには、登記された目的の更なる詳細が記載されます。
表題部で言うところの「原因及びその日付」に近しいものがありますが、一例として、売買により所有権が移転したのであれば、甲区の「権利者その他の事項」には下記のような記載がされます。
原因 平成〇年〇月○日 売買
所有者 北南県西市東町1丁目1番地1 山田太郎
更にこの下に、「順位〇番の登記を移記」とお書かれることがありますが、これは事務処理上の特記事項ですのであまり気にする必要はありません。
では、乙区はどのような記載がされるのでしょうか。
乙区の場合、様々な権利が記載される場所ですので全てをご紹介させていただくことはできませんが、主には以下のようなことが記載されます。
原因 平成〇年〇月○日 金銭消費貸借同日設定
債権額 金3,000万円
利息 年2.50%
損害金 年14.0%
債務者 北南県西市東町1丁目1番地1 山田太郎
抵当権者 〇○県〇〇市○○町2丁目2番地2 株式会社○○銀行
このように、ローンでこの不動産を売買したのだという事が、この乙区の権利事項から読み取ることができます。
登記事項証明書「共同担保目録」とは
共同担保目録とは、「お金を貸した代わりに、その不動産以外にも担保となっている不動産がありますよ」という事が確認できる事項です。
新築戸建てを買う場合で考えると分かりやすいでしょう。
新築戸建てをフルローンで購入するとなった場合に、土地と建物の両方に抵当権が設定されることになります。
よって、建物の登記簿だけを閲覧した時に、「土地と建物両方に抵当権が設定されている」という事が確認できる事項が共同担保目録なのです。
記載内容については上記までの内容とほぼ同じですが、注意したいのは「順位番号」です。
共同担保目録には順位番号というものが記載されています。
一般的な住宅ローンの利用者であれば気にすることもないかと思いますが、稀に不動産取引において、既に別の抵当権者が存在する場合があります。
それは、権利部の乙区で確認する事ができますが、要は、これから取引を行う際に抵当権を設定する事になった場合に、万一債務者が破産をしてしまった場合に受けられる弁済の優先順位がこの順位番号として記載されているのです。
もし、土地取引の際の登記簿に、複数の抵当権者の記載があったり、順位番号に違和感を覚えた場合は十分に注意する必要があります。
登記簿謄本の読み方まとめ
ここまで、登記簿謄本のあらましや記載事項に関する解説をさせていただきました。
登記簿一つで個人情報が確認できる事がお分かりいただけるかと思いますが、それゆえに、前回もお話させていただいたような「個人情報漏洩にあたるのでは?」なんて疑問が湧くのは誰しも同じなのかもしれません。
とはいえ、上記にご説明させていただいた抵当権や所有権の状況などが確認できないままに取引を行う事になったらどうでしょうか。
一体何を信用して高額なお金の取引をしたら良いのかなんて疑問が払拭できずに、買えるものも買えない、売りたいものも売れないなんて事になりかねませんよね。
登記簿謄本は不動産の履歴書のようなもので、取引を行う当事者にとっては、取引をするに相応しいものであるかを確認するための非常に重要なものなのです。