立ち退き料の法的根拠を解説|賃貸オーナーを悩ませる立ち退き交渉①

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賃貸経営を行う大家さんにとって、いずれは直面するであろう「立ち退き請求」。
ご存知の方も多いかと思いますが、立ち退き請求の際に必ず顔を出すものに「借家権」があります。
正確には借地借家法と言いますが、人が生活を営む上での最低限の住環境を供する上で重要なものとして、借主の権利として不動産業界にその名を轟かせています。

少々大げさな言い方にはなりましたが、それほどに入居者の持つ借家権は強くも特異でもあるともいえるものです。

賃貸人、つまり大家さんが「出ていってほしい」とお願いしたところで簡単に退去をしてもらう事が出来ないのは、この借家権があるからなのですが、だからと言って「絶対に出ていかないぞ!」と言われてしまっては、老朽化した建物の建て替えや、自身の住居としての利用、建物を取り壊して別の用途として活用することなどが一切できなくなってしまいます。

そこで今回は賃貸経営における立ち退きの流れや、立ち退き料の相場について解説させていただきたいと思います。

立ち退きの請求は何かとトラブルが多い

賃貸しているものが土地であろうが建物であろうが、貸主側から解約の申し入れは、正当な事由がないと行う事が出来ないと借地借家法で定められています。

正当事由とは

では、正当な事由とは何でしょうか。

民法ではそれら「正当な事由」について明確に定めているわけではありませんが、主な事由は以下のようなものです。

建物の老朽化による取り壊し、建て替え
賃貸人の住居として利用するための立ち退き
家賃滞納による契約解除

etc…

借主側の主張

ただ、既にこの時点で借主側はこのように主張する可能性があります。

建物の老朽化→「まだ住めるのに取り壊す必要はないと考える!」
賃貸人の住居として利用→「賃貸人の都合によるもので立ち退きに応じる必要はない!」
家賃滞納→「家賃は滞納しているが事前の通告がなかった!」

これらの主張が法的にどう判断されるかは、もはや裁判で判断していくしかなく、それ故に立ち退き交渉は泥沼化する事が非常に多いのです。

とはいえ貸主側としては、自分の所有物であり、必要なことの為に立ち退きを請求しているにも関わらず、交渉に応じない人にいわば占領されてしまっている状態となる可能性もあるわけですから、いずれ関わる可能性のある立ち退き交渉の方法などは事前に把握しておきたいところです。

自分で交渉するか、管理会社を通すか

では、実際に立ち退き請求を行う事になった場合、自分で借主に交渉するか、管理会社へ依頼するかと言った事について考えてみましょう。

これは、どちらにもメリットデメリットがあります。

管理会社等に任せた場合

よくあるケースとして、アパートやマンションのデベロッパー事業を行う管理会社の担当者から、以下のような助言を受ける事があります。

「ご自身で交渉はしないでください。足元を見られるうえに、私どもとオーナー様、借主様との間で言った言わないのトラブルになりかねませんので。」

これには一理あるのですが、不動産会社サイドとしてはとにかく建物を建ててもらいたいという事が前提にありますから、多少オーナー負担が増えてでも交渉を急ぐ傾向にあるとも言えます。

つまり、立ち退きに関する条件や費用を借主側に有利な方向で交渉を成立させてしまう可能性があるのです。

自分で交渉した場合

では、自身で交渉した場合はどうでしょうか。
交渉に自信のある方であれば問題ないと言えますし、最終的な決定者は自分ですので交渉が1度で済んでしまう場合もあります。

後ほど解説させていただきますが、これまでの事例や立ち退き料の相場などを勘案しつつ、立ち退き費用を安く済ませるために誠意をもって入居者と話し合う事ができる、これが自身で交渉を行うメリットだと言えるでしょう。

とはいえ、管理会社や弁護士、不動産会社といった専門家に任せる事で、難しい交渉がスムーズに終わる可能性は高く、逆に自身で交渉を行う事で法的なトラブルに発展する可能性もあります。

立ち退き料って法的根拠はあるの?

では、自身で交渉するか、他の人に任せるかの判断基準ともなる、立ち退き料について見ていきましょう。
立ち退き交渉を行う事となったら、必ず請求されるものに「立ち退き料」があります。

世の中には「手数料」「迷惑料」「違反料」など、「料」の付く名前をよく見かけますが、これらには法的根拠のあるものと、そうではないものが混在しています。

立ち退き料の法的根拠

では、立ち退き料についてはどうでしょうか。
これには借地借家権にてしっかり根拠が示されており、それが以下のような条文です。

「建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。」
 
引用:e-Gov 借地借家法「第二章 借地 第一節 借地権の存続期間等 第六条」

本記事の最初にもご説明させていただいておりますが、この条文の意味するところは「貸主が賃貸借契約の解約を求めることは、正当な事由がある場合で、借主に財産上の給付(要は、立ち退き料を渡す)をすると申し出た場合でないとできません」という事を言っているのです。

法的にそのように言われてしまえば、もはや立ち退き料を支払わないわけにはいかない事になります。
貸主側とすれば、自分の所有物を返してもらうだけの事に何故費用を支払わなければいけないのかと納得できない部分もあるかもしれませんが、もし自分が借主の立場だったらどう思うでしょうか。

ある日突然、大家さんがやってきて、「このアパート取り壊すので退去してください」なんて言われても、会社までの通勤に便利な立地で、近くにスーパーや病院、公共施設も充実し、近所の道はほとんど覚えたなんていう住みなれば場所であれば、いきなり「出て行ってくれ」と言われても納得がいきませんよね。

これらを解決してくれているのが借地借家法であると言っても良いでしょう。
例え建物の所有者が変わったとしても、居住権という生活に最低限必要な権利が守られる。
それが借地借家法なのです。

立ち退き交渉まとめ

いかがでしたでしょうか。
借地借家法の「更新拒絶の要件」という、たった一つの条文のために立ち退き請求となると以上のようなことについて把握、検討しなければいけません。
賃貸経営における立ち退きのお話となるとどうしても難しいお話になりがちなのです。

次回は「立ち退き料の相場と立ち退き交渉の方法」について解説とさせていただきたいと思います。

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