建物の法定点検を解説。マンションオーナー必見「はじめての賃貸経営」

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シリーズも後半戦になりました「はじめての賃貸経営」のコラムですが、今回からは実際の経営、運用について解説させていただきたいと思います。

賃貸経営と一言聞くと、物件探し、物件購入、運用、収益発生という時系列でイメージされる方が多いかと思います。
実際、世の中のアパートマンションなどの建設を手掛けるデベロッパーの広告を見ていると「安定した収益を!」「家賃収入で資産形成を!」といった謳い文句を見ることがよくありますが、それらの言葉を見ていると、放置しておいても収入が手に入る、本当の意味での不労所得が得られそうなイメージが湧きます。

しかしながら、賃貸経営とはこれまでにも申し上げたとおり「経営」ですので、全く何もしなくても良いという事もなく、少なくとも法的に課せられた義務は果たす必要があります。
今回は、不動産オーナーの義務である、「法定点検」について解説させていただきたいと思います。

法定点検とは?種類はどのくらいあるの?

不動産オーナー様の義務と言ってしまえば、修繕義務や建物の管理清掃義務、それこそ賃料の管理やトラブルやクレームに対処する事も義務と言えば義務です。
ただ、今回はそういった「大家さんがすべきこと」ではなく、建物の保全をしていくための「法定点検」という義務について触れていきたいと思います。

まず、賃貸経営を行うにあたって必要な法定点検や管理の種類ですが、大まかに分けると以下のような法律に則ったものになります。

1.消防法
2.電気事業法
3.建築基準法
4.水道法
5.浄化槽法

初めて聞いた名前の法律もあるかもしれませんが、全ては建物保全のために国で定めた、最低限行わなければいけない点検内容がこれらの法律の中に含まれているのです。

とはいえ、建物の大きさや戸数によって不要なものもありますので、「こんなにやらなきゃいけないの?」と気分を落としてしまう必要はありません。

では、それぞれの内訳とその内容について順を追って見ていきましょう。

1.消防法に関する法定点検

消防法に関する点検は「機器点検」と「総合点検」の2つに分かれています。

「機器点検」は半年に一度、総合点検は1年に一度と定められており、消火器、火災報知器、避難設備、誘導灯などが正常に作動するかどうか、また破損や設置位置などについて確認する事となっています。

また、「総合点検」ですが、これは3年に1度でよいとされています。
尚、対象となる建物は、延べ床面積150平米を超える建物に関してとなりますので、6戸ほどの建物である場合は必ず点検が必要です。

この消防設備点検に関して、有資格者によって点検を行う必要があるため専門の会社へ依頼する事になりますが、費用はさほど高いものではなく、10戸程度までのアパートならば2万円以下で点検を行えます。

2.電気事業法

電気事業法で定められた法定点検については、主に1棟マンションを所有している方にとって大事な点検項目になります。

「自家用電気工作物定期点検」と言って、変電、送電設備のスペースにある機器を点検するものになります。

マンションにお住いの方や、用事があってマンションを訪れた時に、住居の扉とは別に設けられた謎の白い扉を見て、「この白い鉄の扉は何だろう…」と思った経験のある方もいらっしゃるかと思いますが、実はあの中には電気系統の設備があるのです。

ともあれ、この自家用電気工作物定期点検は3つに分かれます。

日常巡視点検

毎月1回行われる、異常や損傷などが無いかを確認する点検

定期点検

1年に1度行われるもので、電気設備を止めて、点検だけではなく、設備の清掃や作動試験などを行います。

精密点検

3年に一度必要な点検ですが、定期点検同様に全設備の電気を止め、各機器の総合的な点検を行います。

やはりこれらの点検も資格者が必要になりますが、毎月の点検に必要な費用はマンションの規模や電力の大きさによって様々です。

3.建築基準法

建築基準法においても法定点検の種類が分かれますが、主なものは「昇降機等検査」「建築設備点検」「特殊建築物定期検査」の3つです。

これらもやはり、建物の種類や規模によって要不要が分かれますが、それぞれの内容を見てみましょう。

昇降機等検査

年に1回必要な点検です。漢字ですと分かりにくいですが、主にエレベーターの点検の事を指し、エスカレーターも含まれます。
エスカレーターを設置するほどの大規模なマンションはほとんどお目にかかる事はありませんし、アパート経営者の方であれば尚更ですので費用については省略致します。

建築設備点検

こちらも年に1回必要な点検です。換気、排煙、貯水、排水といった設備を点検し、検査結果を行政へ報告する義務があります。
とはいえ、こちらの点検も1000平米を超える共同住宅、つまりマンションなどの大きな建築物について課せられる義務(東京都の場合)の為、数世帯のアパートオーナー様は気にする必要もないかもしれません。

特殊建築物定期検査

「特殊建築物」とはマンションの事を指しており、防火区画、避難階段と設備、外部設備、塀などといった広い点検項目を指定しており、3年に1度必要になる点検です。
その建物を全体的に点検するものですが、建築設備点検と同じ、1000平米以上の建物について課せられる義務です。

4.水道法

賃貸オーナー様に直接関係があるのが「簡易専用水道管理状況検査」です。
年に1度検査が必要になるものですが、至極簡単に言ってしまえば「貯水槽や受水槽の検査、清掃」の事になります。

検査内容は専門的な知識が必要にはなるものの、「貯水槽の周りに汚染につながる物がないか」「水の色や匂い、塩素濃度に異常がないか」「水槽内の清掃業務」といったものが主になります。

建物の大きさにより不要な点検もあるとは申し上げましたが、そもそも貯水槽が必要になるのは、水道管から水を引き込むには圧力が足りないような地域や建物の高さであったりする場合で、簡易専用水道管理状況検査については、貯水槽を設置している時点で必要な点検となります。

法定点検としての費用はさほど高くはありませんが、任意の保守点検や設備の修理などを行えば10万円を超える事もあるようですが、生活用水として居住者への安心を確保するには必要な物ですので、ここを節約対象にするのは望ましくありません。

5.浄化槽法

水道法の項で貯水槽についてご説明させていただきましたので、浄化槽法については混同してしまうかもしれませんが全くの別物で、むしろ、浄化槽を目にしたことがあるという方のほうが少ないかもしれません。

浄化槽は、下水道の引き込みが無いような地域について設置が義務とされている、家庭排水を浄化して放水するためのものです。

小中規模のアパートやマンションで、敷地の隅に少しだけコンクリートの段差があるマンホールのようなものが3つほど並んでいるのを見たことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、実はあの下に浄化槽が埋まっています。

浄化槽の法定点検「設置後の検査」と「定期水質検査」の違い

さて、浄化槽とは何かというよりも法定点検についてです。
浄化槽の法定点検は新設から3~5カ月のうちに1度行う「設置後の検査」と、毎年点検を必要とする「定期水質検査」に分かれます。

2つの違いを分かりやすくご説明させていただくと、「設置後の浄化槽がシッカリ機能しているか」を確認するのが設置後の検査、「1年を通して機能したかの確認や清掃、その他保守点検を行う」のが定期水質検査になります。

費用については貯水槽点検と同様に、法定点検はさほど高くなることもなく、地域によっては数千円で済むところもあるようですが、個別の点検や清掃業務などになると年間を通して10万円を超える事もあるようです。

アパート、マンションオーナーにとって必要な点検

ここまで、全5項目の法定点検について解説させていただきました。
改めて申し上げますが、これらの法定点検は内容はもちろん、点検を依頼する先や費用、そもそも点検が必要かどうかは建物の規模や場所によって異なります。

では、数戸程度の規模のアパートオーナー様にとって必要な法定点検はどれになるかというと「消防法」で定められた法定点検です。
消防設備に関する点検は「1年に1度」と「3年に1度」というように決めれられており、延べ床面積150平米以上の建物には絶対に必要な法定点検となります。

とはいえ、実際にはこの消防設備点検を行っていないアパートオーナー様は意外と多いと業界では言われており、行政もそれらを全て把握するのは難しく、放置されているケースもあるようです。

たまに、築年数の古い見た目のアパートなどで、消化器が錆びて転がっているような光景を目にすることがありますが、そういったアパートは消防設備点検を行っていない可能性が考えられます。

消防設備点検を怠ると罰則や拘留といった厳しい処分

とはいえ、この消防設備点検を怠っていると判断された場合、罰則や拘留といった厳しい処分となる場合もあります。
実際に、過去に起きた新宿歌舞伎町のビル火災における事故では数億円という多額の賠償金と、一部オーナーについては禁固刑が科せられるという、大変重い処罰がなされました。

「自分のところは大丈夫だろう」と思うことなく、いざという時に人命だけでなく、建物自体を守る事にも繋がる法定点検ですので、「義務だからやる」という事ではないと肝に銘じた方が良いかもしれません。

建物の法定点検まとめ

いかがでしたでしょうか。
内容として全ての詳細をご紹介させていただくとかなりの量になってしまうため、簡易的にご説明させていただきました。

上記にご紹介したような大きな事故にならないにしても、年間の経費を浮かせようとしたその行為は、思わぬ事故の可能性を自ら高めている事に繋がります。

賃貸経営のブームが始まってからアパートの乱立が続く昨今の賃貸経営事情の中であまり語られることがない法定点検ですが、居住者の方からは共益費や管理費等をいただいています。

それらの費用は居住者が安心して暮らせるようにという名目で受け取っている費用ですから、法定点検だけでなく、その他設備点検についてはしっかり行っていきたいものです。

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