3つの利回りとは?わかりやすく解説「はじめての賃貸経営」
前回、物件探しの基本として、「物件タイプ」「利回り」「物件の良し悪し」について簡単にお話させていただきました。
その中で、利回りについては内容が深くなるため今回の記事とさせていただきました。
利回りについては、初めての賃貸経営であっても、既に賃貸経営を行っている方にとっても常に意識しておくべき重要事項と言えるでしょう。
今回は、物件選びの際に自分なりの目安を作る事ができるように、利回りについての考え方と、キャッシュフローの重要性について見ていきたいと思います。
目次
賃貸経営の利回りは主に3つある
前回の記事の中で、利回りには「表面利回り」「実質利回り」「想定利回り」の3タイプがあるとご説明させていただきました。
これらの違いを定義すると以下のようになります。
物件に投じた金額の年間家賃収入による回収率
物件の維持費を考慮して計算する、物件に投じた金額の年間家賃収入での回収率
周辺の家賃相場で物件が満室になった前提で計算された不動産会社が提示する利回り
実質利回りを見る
これらのうち、不動産オーナー様が見るべき利回りはどれかというと、言わずもがな、実質利回りです。
既に賃貸経営を行っている場合ですと、表面利回りさえ分かれば後は自分なりに定めた維持費で簡易計算ができるという方もいらっしゃいますし、地域密着で賃貸物件を運用していると想定利回りでザッと計算してしまう凄い方もいらっしゃいます。
ただ、やはり賃貸経営が初めてであったり賃貸経営に慣れていない間は、不動産経営のスキルを高めるつもりで実質利回りについて熟慮しく必要があるでしょう。
想定利回りにはご注意
特に注意すべきなのは想定利回りです。
定義のとおり、これは不動産会社が提示する、周辺の家賃相場で満室になった時の利回りですので、維持費や空き室リスクについては全く考慮されていないばかりか、場合によっては利回りがカサ上げされているケースもあります。
利回りとは何のためにあるのかを改めて考えてみましょう。
不動産を購入して、健全かつ安定的な収入源として参考とする数値が賃貸経営の利回りですので、他人が提示した数字をそのまま鵜呑みにするのではなく、様々なリスクや費用があることから目を背けずに多少厳しめの試算をするくらいがちょうど良いと考えるべきでしょう。
利回りを把握したらキャッシュフローの試算に移行する
さて、前回から今回にかけて利回りについてクドいようにお話させていただいておりますが、物件探しにおいてはそれだけ重要であることを改めて認識しましょう。
ただ、利回り利回りと何度も申し上げてはいますが、実質利回りを試算していく事となると、結果的に「キャッシュフロー」の考えに行きついている事に気付く事になるかと思います。
キャッシュフローって何?
そもそもキャッシュフローと利回りは似て非なるものです。
利回りはあくまでも「回収率」。
キャッシュフローは諸経費などを引いて物件から得られる実質的な「収入額」です。
キャッシュフローの事を「純利回り」と呼ぶこともありますが、物件をローンで購入するのであれば、回収率とは別に収入額としてキャッシュフローを把握、検討しておくことも重要になります。
ではここで、利回りだけで物件探しをすることがいかに危険であるかという事を学ぶために、1Kの単身用中古マンションを購入した場合のキャッシュフローの試算をしてみましょう。
試算の前提
・物件価格1500万円(税務上の評価額は1050万円とする)
・全額ローン購入(30年払い)
・入居者有り
・表面利回り5.6%(家賃7万円)
費用内訳
・管理委託料(5%)4万2,000円(毎月3500円)
・損害保険料2万円
・ローン返済額75万6,000円(毎月63000円)
・物件取得時の印紙税4万円(売買契約2万円、ローン2万円)
・登録免許税(0.3%)3万1,500円
・不動産取得税(3%)31万5,000円
・消費税120万円
・固定資産税(1.4%)14万7,000円
・都市計画税(0.3%)3万1,500円
・修繕積立金3500円(下記、管理費にて相殺)
初年度の費用合計=約254万円(修繕積立金除く)
家賃収入
・家賃7万円(管理費3500円)
初年度の年間家賃収入=84万円
初年度のキャッシュフロー
費用合計約254万円 - 家賃収入84万円 = ▲170万円
購入価格を別としても、初年度の費用合計で254万円かかりますから、収入より費用の方が多いのは一目瞭然です。
初年度のキャッシュフローはマイナス170万円になりますので、毎月の持ち出しが約14万円にもなります。
計算を分かりやすくするために、所得税や消費税、減価償却などについてはここでは触れませんが、税金の還付ありきで考えるよりも節税の範囲で考えた方が良いでしょう。
とはいえ、表面利回りが5%以上だったにも関わらず、初年度からこれだけのマイナスが出るのですから、どちらにしても表面利回りや想定利回りで物件を選ぶことの怖さがお分かりいただけるかと思います。
では次年度からのキャッシュフローについても見てみましょう。
2年目のキャッシュフローも見てみよう!
費用内訳
・管理委託料(5%)4万2,000円(毎月3500円)
・ローン返済額75万6,000円(毎月63000円)
・固定資産税(1.4%)14万7,000円
・都市計画税(0.3%)3万1,500円
・修繕積立金3500円(下記、管理費にて相殺)
初年度の費用合計=約98万円(修繕積立金除く)
家賃収入
・家賃7万円(管理費3500円)
初年度の年間家賃収入=84万円
初年度のキャッシュフロー
費用合計約98万円 - 家賃収入84万円 = ▲14万円
初年度同様、ここでも不動産評価額やその他税金還付などについては考えません。
とはいえ、2年目となると初年度に必要であった税金が無くなる分、大きくマイナスが少なくなりますが、それでもマイナスが発生します。
毎月の持ち出しも1万円程度となりますので随分と楽になった気もしますが、3年目になりますと保険料の更新もありますし、入居者が退去してしまえば家賃収入が0になりますから、無収入経営どころか毎月大赤字になります。
更に、もし銀行のローンを金利変動制で借りていたとしたら、金利が上昇した時には最悪、物件の売却をしてもなお借金が残るという結果にもなりかねません。
利回りとキャッシュフローの重要性
いかがでしょうか。
利回りのパーセンテージだけで判断してしまう事で収益を生むどころか、毎月キツイ支払いに追われかねない事がご理解いただけたかと思います。
世の中には「不動産投資で不労所得を得れば、遊んで暮らせる!」という内容の広告やインターネットの記事がありますが、上記のように、そう甘い世界ではありません。
とはいえ、実際にサラリーマン大家さんというものが存在し、早期に脱サラに成功している方も多くいらっしゃいます。
つまり、キャッシュフローが完全にプラスになっていて、少なくとも毎月の生活を豊かにするだけの家賃収入があるという事ですが、彼らなりの理論と工夫で経営を成り立たせているのです。
これは、特別な人にだけできるという事ではなく、上記のようなキャッシュフローを意識した賃貸経営を行う事さえできれば、誰にでも実現可能な事だと言えるでしょう。
今回は、利回りとキャッシュフローの重要性についてお話させていただきました。
次回は、キャッシュフローをプラスにするコツや物件の良し悪しの判断基準などについてお話させていただきたいと思います。