地面師の恐怖と積水ハウスの63億円詐欺事件!~前編~

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ハウスメーカーとしては世界一とも言われる「積水ハウス」。
元は積水化学工業のグループ会社であり、現在は実質的には独立した会社であるということを意外にご存知ない方も多いかと思います。
当然、東証一部にも上場しているハウスメーカー最大手である積水ハウスが、今回、業界に衝撃をもたらすほどの巨額詐欺事件の被害を受けたという事で、不動産業界において大きな話題となっています。
その額、なんと63億円。

積水ハウスに一体何があったのか。
事件の詳細、被害関係などを探ってみたいと思います。

63億円詐欺事件の概要

実は今回の詐欺事件ですが、積水ハウスが正式に発表したのは2017年8月2日の夕刻。
同社ホームページのニュースリリースとして突然公開されたのですが、以前から一部週刊誌には本件に関して取り上げられていたようです。

ともあれ、事件の概要は以下のようなもの。

物件所在:品川区五反田にある海喜館(うみきかん)
面積:約600坪
購入代金:70億円
 
(登記事項の動き)
売買予約:4月24日 IKUTA HOLDINGS株式会社、積水ハウス株式会社
売買代金の決済日:6月1日(積水ハウス株式会社ホームページより)
所有権移転:7月24日 実弟らの相続による所有権移転
所有権移転請求権の抹消:7月25日
 
事件の公表:2017年8月2日

積水ハウスはマンション用地として以上の物件の売買を行おうとしていました。
五反田において600坪ですから、田んぼ2反分にもなる相当な規模であり、オリンピックに向けて各社が都内の土地を買い漁る中での出来事であったため、大型案件化する土地としての期待は大きいものだったのではないかと予想されます。

さて、一見、何の変哲もない普通の売買行為に見える上記の登記事項ですが、2つのおかしな点があります。
まず、7月24日に突然、実弟らの名前が出てくること。
IKUTA社と積水ハウスにより随分前から売買予約や所有権移転の話が進んでいたにも関わらず、この日、無関係のはずの実弟らによる登記事項の動きがありました。

そして二点目。
翌日には、IKUTA社や積水ハウスの登記事項は抹消されています。

このおかしな動きを探るため、積水ハウスのホームページを確認すると、「分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして」とのお知らせが公表されています。
内容は以下のとおり。

(積水ハウスホームページより)
当社が分譲マンション用地として購入した東京都内の不動産について、購入代金を支払ったにもかかわらず、所有権移転登記を受けることができない事態が発生いたしました。顧問弁護士と協議のうえ、民事・刑事の両面において鋭意対応しておりますが、その概要について以下のとおり説明いたします。
本件不動産の購入は、当社の契約相手先が所有者から購入後、直ちに当社へ転売する形式で行いました。購入代金の決済日をもって、弁護士や司法書士による関与の下、所有者から契約相手先を経て当社へ所有権を移転する一連の登記申請を行ったところ、所有者側の提出書類に真正でないものが含まれていたことから当該登記申請が却下され、以降、所有者と連絡が取れない状況に至りました。
当社は何らかの犯罪に巻き込まれた可能性が高いと判断し、直ちに顧問弁護士によるチーム体制を組織のうえ、捜査機関に対して被害の申入れを行い、その捜査に全面的に協力すると共に、支払済代金の保全・回収手続に注力いたしております。
なお、以上の件にともなう公表済みの平成30年1月期業績予想の修正はいたしません。

引用:積水ハウス株式会社
http://www.sekisuihouse.co.jp/

つまり、4月に登記事項が動き出す前から水面下で詐欺師が動き始めており、6月1日に積水ハウスが約70億円の決済の完了を行った後、土地の所有者であると名乗っていた人物たちの行方が分からなくなった上に、それまでの登記手続きには不正などがあるとして却下。
実際の所有権は実弟である2名に所有権移転されるという、まさにお金だけが消えたのが今回の事件なのです。

この事件の背景にはどのようなことがあったのか。
どのメディアでも「地面師」の存在を挙げていますが、それはまた後程解説させていただくとして、まずは世間の反応を見てみましょう。

巷の反応

株価の動き

事件が公に発表されたその日、既に東京株式市場は大引けを迎えており、積水ハウスの株価は「1924円」となっていました。
大引け後に発表された今回の事件で、個人投資家の間では「明日200円は下がる」「空売り準備だ」などという声も聞かれましたが、フタを空けてみれば下落はかなり限定的。
8月の3、4日の最安値も「1896円」と1.45%ほどの下落となりました。
株式相場の格言である「事故は買い、事件は売り」ということで、業界最大手である純資産2兆円を超える大会社の一時的な騒ぎであろうということで、押し目買いなども入ったことで下落はしたものの買い支えられた格好となっています。
IRとしても、「業績予想の修正はしない」と言っていることも、株価の乱高下を防いでいると思われます。

事件に対するツイート

「【積水ハウス「地面師」被害か】「積水ハウス」が都内の不動産の購入代金を支払ったが、所有権移転登記を受けられない事態が起きたと発表。「地面師」の被害に遭った可能性が高いという。大手企業が被害に遭うのは異例。」

「しかし、積水ハウスもおかしいよね。何で売買予約の仮登記で売買代金70億円のうち63億円も払うのだろう?普通は仮登記だったらせいぜい半分だよね。積水ハウスの担当者と担当役員、どうかしてるよね。。」

「積水ハウスが地面師にやられたで。1000株持ってるんやがどないしよ」

「これ、司法書士はちゃんと本人確認しなかったの...?」

「積水ハウスの西五反田の地面師事件、売買予約の仮登記を申請した司法書士は、責任問われるのだろうか?書類に真正ではないものが含まれていて却下されたというし。。」

大手企業が詐欺の被害に遭ったという事もありますが、取引相手が個人であっただけにその衝撃度は増しているようです。
株価が大幅下落になる事もなかったといはいえ、巨額の詐欺事件である事に変わりなく、共通して出てくる「地面師」「司法書士」といったワードには関心が高いようです。

地面師とは

それでは、事件の真相を探る前に、当然のように出てきている「地面師」について少し解説させていただきます。

地面師とは、簡単に申し上げますと、不正な取引で土地の売買を成立させて金銭だけ騙し取る詐欺を行う者の事を言います。
悪魔の術を操る者が魔術師なら、土地を操る者が地面師という事ですね。

典型的なやり口としては、地面師本人がその土地の所有者を名乗り、不動産会社に土地の売却を持ち掛けます。
単独で行われることはなく、複数人で「手配役」「なりすまし役」などの分担が行われるケースがほとんどであり、用意される書類に偽造書類があるのは当然。
途中、弁護士や司法書士などが書類の偽造に気付けば良いが、気付かなければそのまま所有権移転が行われてしまう、若しくは今回のケースのように途中で偽造や不正が発覚して所有権移転などの登記が抹消に至るケースもあります。

ナニワ金融道やミナミの帝王といった、金融マンガでしか起こりそうにない事件は現実世界でも実際に存在しており、知らぬ間に自分の土地が他人の名義になっていたという事も過去にはあったようです。
場合によっては司法書士も地面師とグルであったというかなり悪質なケースもあります。

さて、そんな地面師による詐欺被害に遭った積水ハウスの事件ですが、次回は、今回の事件のより詳細な背景と、事件の謎についてもう少し掘り下げてみたいと思います。

積水ハウスの63億円詐欺被害事件<<後編はこちら>>

【続報記事】積水ハウスの63億円事件続報!積水ハウスだけがターゲットではなかった!?

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