自己所有の物件が事故物件に!?避けられない事故にどう対応する?
夏の時期になると、「私の恐怖体験」などと言って、建物内で起こるおどろおどろしい心霊現象と、その部屋で過去に起きた悲しい出来事といったものを放送していたりします。
一般の視聴者にとっては夏の風物詩だと思いますが、不動産オーナー様にとっては、何だか人ごとではない感情を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
そんな「心霊現象が起こる」「過去に死亡事故が起きた」といった物件を「事故物件」と言い、これまでに耳にされた方は多いかと思います。
今回は、もし自分が所有する物件が事故物件になってしまったら、どのような対応をすべきかを解説させていただきたいと思います。
目次
そもそも事故物件とは
事故物件という名称はよく聞くものの、実は事故物件というもの自体には明確な定義が定められているわけではありません。
よく考えてみれば、事故物件という言葉そのものが、その部屋で誰かが死亡した経緯がある場合に使われるものだという認識は誰しも同じかと思いますが、「ペットが亡くなったら事故物件?」「家の外で死亡したら事故物件?」など、事象を考えると無限とも思える疑問が湧いてきますし、法律上もそれらを詳細に定めていません。
物理的瑕疵と心理的瑕疵
ただ、一般認識としての事故物件は「物理的瑕疵(ぶつりてきかし)」と「心理的瑕疵(しんりてきかし)」に分けられますが、建物に欠陥があった、白アリが荒らしていたなどの物理的瑕疵に対して、心理的瑕疵は「一般に嫌悪すべき歴史的背景」がそれにあたるという判例も出ています。
つまり、物理的瑕疵の場合は別件として扱われる場合も多く、ほとんどの場合「事故物件=心理的瑕疵のある物件」と考えて差し支えないでしょう。
他にも「買主(借主)は当然ながら、他の人ですら同じ事由に対して住み心地が悪いと感じるなら心理的瑕疵である」と解釈できる判例もあります。
心理的瑕疵物件の例
では、具体的に心理的瑕疵とはどのようなケースがあるのでしょうか。
2.事故により死亡した経緯がある
3.建物周辺に住み心地を悪くする施設や団体がある(暴力団事務所やゴミ屋敷、風俗店など)
4.環境が極端に悪い(悪臭や騒音問題など)
これらを心理的瑕疵ありと言う場合が多いのですが、1.と2.についてが主に心理的瑕疵のメインとなる事由で、3.と4.については「環境的瑕疵」と呼ばれることがあります。
どちらにしても、上記に申し上げた「一般に嫌悪すべき歴史的背景」「住み心地が悪いと感じる」というところは共通しています。
このように、心理的瑕疵付きの物件である事故物件には無数の可能性が考えられるため、事故物件への定義を定めること自体が非常に難しく、判例に頼るしかないと言った部分が往々にしてあるのです。
所有する物件が事故物件になった後のリスク
さて、「事故物件にならないようにしっかり管理しよう!」と言っても、入居者が室内で起こす事件については管理にも限界がある事はお分かりいただけるかと思います。
むしろ、現在これをお読みいただいている不動産オーナー様の中に既に、事故物件を所有されている方すらいらっしゃるかもしれません。
では実際に自分の所有する不動産が事故物件になってしまった場合に、どのようなリスクあるのか見てみましょう。
告知義務による入居者の減少
こちらは有名な話ですのでご存知の方も多いかと思いますが、事故物件になってしまったら、次回の募集時には必ず「心理的瑕疵有り」「告知事項有り」との記載をする必要がありますので、次の入居者がなかなか決まらないといったリスクに晒される事となります。
もし事故物件であることを隠して契約を結んでしまい、その後事故物件であることが借主に知られてしまうと、間違いなく損害賠償請求をされる事となります。
特殊清掃による費用
事故物件となると、通常のハウスクリーニングでは事故の跡やニオイが取れない場合が多く、「特殊清掃」を依頼する事となります。
「特殊清掃士」という資格もあるほどで、専門性やスキルが必要となるため費用は通常の3~5倍になります。
もちろん、業者により料金は違いますが、最安値でも1R程度で6万円前後、ファミリータイプとなると15~30万円ほどになる事もありますので、事故物件になると通常よりも費用が嵩むことは間違いありません。
リフォームによる高額な費用
不動産オーナー様の中には、事故物件となったことで以前を上回るデザイン性や機能性を求めてリフォームを行い、可及的速やかに次の入居者を募集される方もいらっしゃいます。
とはいえ、リフォームも決して安いものではなく、1Rの部屋をフルリノベーションするだけでも80~100万円、ファミリータイプとなれば数百万円の費用が掛かる事もあります。
もちろん、リフォームをして新築同様になったから告知義務がなくなるわけではありませんので注意しましょう。
家賃の減額による収入減
事故物件は極端に家賃が安くなるということも耳にしたことがある方も多いのはないでしょうか。
一般的には3~5割ほど安くなっていると言われていますが、ここ最近では、そんな安い家賃に需要があると見込んで事故物件専門の不動産業者もあります。
ただそれは、世間が事故物件に対して寛容になったということではなく、そういった需要に対する業者が現れたという単なる事実ですので、家賃を減額しないで入居者を見つける事は至極難しいことだと言えるでしょう。
事故物件になったら行うべき対応
続いて、自分の所有する不動産が事故物件になってしまった時の対応についてです。
事故物件となれば、上記までにご説明させていただいたリスクと、いやがおうにも戦わざるを得なくなりますので、事前に基本的な対応策を把握しておきましょう。
予め保険には加入しておく
少子高齢化が進む中で、「孤独死」の問題も何かと報道されることが多くなりましたが、孤独死だけではなく、自殺、他殺、病死といったものである場合においても原状回復の費用が嵩む上に、家賃収入も減ることになるでしょう。
そういった時代背景もある事から、家主向けの少額短期保険に予め加入しておくと良いでしょう。
毎月の保険料も数百円の場合が多く、いざ入居者の死亡などの事故が起きた時は家賃の保証や原状回復費用などを保険金で賄う事が可能です。
家賃を大幅に下げてとにかく入居者を募集する
考え方が多岐に渡るため、ここまでのお話では解説しておりませんでしたが、実は事故物件も1度次の入居者が入ったら次回の入居者には告知不要という暗黙のルールもあり、2年経ったら告知義務が解除されるなど、告知義務には様々な解釈があります。
そのような曖昧な解釈がまかり通っているなら、とにかく入居者を募集して一度でも住んでもらえれば、告知義務の効果は薄くなってくるものと考えたいところです。
しかしながら、不動産業界では「事故から2年経過するか、若しくは2人目以降の入居者には告知義務はない」というルールが存在しています。
これもやはり、過去の判例を元にしたものでありますが、心配な場合は入居者を募集する際に不動産業者や管理会社に相談すると良いでしょう。
連帯保証人に損害賠償請求を行う
事故物件になってしまうと何かと費用が掛かるという事は何度かお話させていただきましたが、実はそれらの費用を連帯保証人や遺族に請求する事が可能です。
遺族である場合も連帯保証人であっても、実際には損害賠償の上限があったり、そもそも損害賠償を請求できるのかという決まりがあるわけではありません。
とはいえ、遺族の心情を考えると損害賠償もしづらいということもあるかと思いますので、やはり行動を起こす前に弁護士などに相談した方が良いかもしれません。
物件を買い替える
「事故物件とはいえ、面倒な事はしたくない」といったオーナー様もいらっしゃるかと思いますが、資金的余裕があるのであれば、不動産の買い替えも検討してみましょう。
とはいえ、賃貸だけではなく、売買においてももちろん告知義務はありますので、売却価格も安くせざるを得ないと肝に銘じておきましょう。
大掛かりなリフォームを行う
こちらも既にお話させていただいておりますが、家賃減額や風評的な損失は免れないものの、これを機にリフォームやリノベーションによって、周辺にはない特別な高級賃貸にしてしまうなんて対応も有りです。
場合によってはアパート名やマンション名すら変えてしまう事も検討範囲となります。
ただ、既に入居者のいるアパートで、いきなりアパート名を変えるというのは郵送物の誤配にも繋がりますし、入居者に住所変更という手間をかける事になりますので、物件名はそのままに、外観から室内までを刷新するのも良いでしょう。