2017年基準地価!最も地価が上昇したのは?最も高額な場所は?
2017年9月20日、今年7月における日本の地価調査の結果が国土交通省により発表されました。
毎年一回、国土交通省によって公表されるこの地価調査結果は、実際の不動産取引においての参考価格となるものですので、世間の注目は自然と集まります。
特に今回は、意外な場所の地価上昇率が著しく目立ったため話題となっていますが、今回の地価価格調査の内容を詳しく見てみましょう。
目次
最も地価が上昇した場所とは?
京都府京都市伏見区深草稲荷御前町の地価上昇率
今回の基準地価調査で最も話題になっているのは、商業地の「京都府京都市伏見区深草稲荷御前町」という住所です。
この住所の地価上昇率はなんと29.6%!
前年比の約3割アップという結果になっています。
どんな土地なのだろうとGoogleマップで確認してみると、そこには自転車屋さんやソフトクリーム屋さん、歯科医院がある程度。
人気観光スポットは地価が上昇しやすい?
「はて、なんでこの住所の地価が上昇しているんだろう?」
そんな風に思わせる今回の調査結果の要因となっているのが「伏見稲荷大社」です。
トリップアドバイザーなどを始めとする、様々な旅行サイトで人気の観光スポットに伏見稲荷大社が高い評価を得ており、中でも千本鳥居が人気のようです。
こういった人気観光スポットとして選ばれているのに加え、訪日外国人の増加により、京都市伏見区深草稲荷御前町という住所周辺の店舗需要が高まったことが地価を上昇させたと考えられます。
続いて上昇率が高い結果となっているのが、「北海道虻田郡倶知安町字樺山」です。
こちらは、用途地域で言うと住宅地になりますが、前年比28.6%という上昇率になっています。
京都とは違って主に自然の多い地域ですが、やはり外国人観光客の宿泊リゾート地としての需要の高まりが地価を上昇させたという背景があるようです。
参考:国土交通省 平成29年都道府県地価調査「上昇率順位表(全国)」
日本で最も高い土地はどこ?
さて、上昇率については京都と北海道という海外からの観光客の需要により、比較的に意外な場所が1位となりましたが、日本で最も高い土地はどこにあるのでしょうか。
これまでにも日本の一番高い土地は話題になる事もありましたが、商業地と住宅地で分けて見てみましょう。
明治屋銀座ビルの土地価格
まず商業地ですが、「東京都中央区銀座中央5-13(明治屋銀座ビル)」が最も高い土地という結果が出ています。
その額、何と3890万円。
これは、3890万円で明治屋銀座ビルのある土地が買えるという事ではなく、あくまで㎡単価であり、坪単価に直すと1億3134万円という事になります。
以前から銀座周辺は土地単価の高い場所という事で有名ですが、そんな場所ながら上昇率はこちらも高く、17.9%となっています。
これ以上地価の上がりそうもない場所でもしっかり地価の上昇があるところ見ると、局所的な不動産バブルだと言われているのも納得できます。
東京都千代田区六番町の土地価格
そして住宅地です。
住宅地は銀座から少し離れ、四ツ谷駅付近にあたる「東京都千代田区六番町1」のエリアです。
周辺は高級マンションや学校、オフィスビルが立ち並んでおり、上昇率はさほど高くなく、前年比4.7%となっています。
ただ、㎡単価は3800万円とどちらにしても高い土地であるのは変わりませんが、住宅地とはいえ、戸建てを建てるにはよほどの資金力が必要になります。
参考:国土交通省 平成29年都道府県地価調査「基準地価格高順位表(全国)」
全体的に地価変動率は上昇?下降?
さて、全国的に見た時の上昇率の最も高い場所と、日本で一番高い土地を見てまいりました。
では、日本全国で見た時の不動産地価の変動率はどのようになっているのでしょうか。
まず、地方別に商業地と住宅地の地価変動率を見てみると以下のようになっています。
商業地の地価変動率
北海道 △0.5
東北 △0.7
関東 △1.0
北陸 △0.4
中部 △1.2
近畿 △1.0
中国 △0.7
四国 △1.7
九州・沖縄 0.3
住宅地の地価変動率
北海道 △1.4
東北 △0.8
関東 △1.0
北陸 △0.9
中部 △1.6
近畿 △1.6
中国 △1.2
四国 △1.6
九州・沖縄 △0.4
参考:国土交通省平成29年都道府県地価調査「地方別・用途別対前年平均変動率」
日本の基準地価の変動率はマイナス圏を推移
景気の良いお話の後にこの結果を見ると、これもまた意外な数字に思える事かと思います。
今さらのお話になるかもしれませんが、日本の基準地価の変動率というものはバブル崩壊以降から本日に至るまで、継続してマイナス圏を推移しています。
これは公示地価についても同じで、ミニバブルが起きた2000年以降に一時プラス圏に戻りましたが、その後大幅に下落。
今年ようやくプラス圏に戻ってきてはいるものの0.1%という変動率です。
基準地価と公示地価の違いについては、別の機会にお話させていただきたいと思いますが、いくら大幅な上昇率を記録するところがあっても、日本の基準地価というものは30年近くマイナスのまま推移しているのです。
ニュースで耳にする不動産バブルとは?
では何故、全国でマイナスの数字を記録している地価変動率があるにもかかわらず、ニュースや新聞では「今の日本は不動産バブルだ」と言っているのでしょうか。
「日本で最も高い土地」の部分でもお話させていただきましたが、実は今騒がれている不動産バブルというのは限定的な地域の事を指しており、全国的に見て土地価格の動向や変動率はさほど芳しいものではありません。
それを裏付ける以下のような調査結果もあります。
商業地の土地価格の変動率
東京圏 3.3
大阪圏 4.5
名古屋圏 2.6
三大都市圏 3.5
地方圏 △0.6
地方四市 7.9
その他の地方 △1.1
全国 0.5
住宅地の土地価格の変動率
東京圏 0.6
大阪圏 0
名古屋圏 0.6
三大都市圏 0.4
地方圏 △1.0
地方四市 2.8
その他の地方 △1.1
全国 △0.6
参考:国土交通省 平成29年都道府県地価調査「圏域別・用途別対前年平均変動率」
地方圏とは三大都市を除いた地域、そして地方四市とは札仙広福(さっせんこうふく)と呼ばれる、札幌市、仙台市、広島市、福岡市という4市をまとめたものです。
これらの結果を見てお気づきになるかもしれませんが、つまりは、地方都市はほぼマイナス、人口の集まる主要都市だけがプラスという結果になっているのです。
では、現在が不動産バブルと言えるかというと、実は全くそんなことはありません。
確かに、都心部や商業地域の一部エリアで30~40%の上昇率を記録している場所もありますが、1990年代まで続いたバブル期においては、全国平均で25%、東京圏においては最も高い時期で60%を超えていた異常な時期がありましたので、その頃と比べるとバブルとは言えない状況であることは明らかです。
基準地価まとめ
基準地価調査の結果を見る限りでは、訪日外国人による需要から土地価格が上昇した地点が目立ち、故に多くのメディアでは「オリンピックが終わったら不動産バブルが崩壊する!」と言っています。
しかしながら、筆者としては先ほど申し上げましたとおり、不動産バブルとはまだ言い難い水準にある事から考えても、再び過去のバブル崩壊のような憂き目を見る事は無いのではないかと推測しています。
オリンピック需要による不動産価格の上昇を否定する事はできませんが、元々変動率の低い地方都市についてはオリンピックが終わったところで基準地価が暴落する事もないでしょう。
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むしろ、少子高齢化、人口減少という避けて通れない不動産価格の下落といった、もう少しマクロな視点からの対策を現段階からしていかなければいけないのではないかと考えています。