生産緑地は守られる!2022年問題に解決案!ニュースに学ぶ不動産

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ここ最近、少しずつ目にする機会が多くなった「2022年問題」。
2022年とだけ言われてもどんな問題なのかご存知ない方も多いかもしれませんが、これは現在の不動産バブルに影を落としかねない大事な問題だと言われています。

普段暮らしている地域で、「生産緑地」と書かれた杭が立った農地を見たことはありませんでしょうか。
若しくは、何かを栽培している様子はないけど、ただただ芝生が広がるだけの広い敷地の生産緑地。

実は、この生産緑地が2022年問題としてニュースとして取り上げられることが多くなったのです。
では、この生産緑地による問題とはどのようなものなのか、そして今後の生産緑地の行方を見ていきたいと思います。

生産緑地とは?全国にどのくらいあるの?

生産緑地とは、その名のとおり「農作物を生産すること」を主な義務として、市区町村から指定を受けた土地の事を指します。
主に生産緑地は都市圏に集中していますが、これらは土地の宅地化が加速しすぎる事で公害や災害などの住環境のバランスを取ることを目的としており、「宅地は宅地、農地は農地」というように、人と自然が調和した住環境を保全するために制定されたものです。

全国の生産緑地の面積

現在の生産緑地ですが、国土交通省の公表している資料によると、全国222都市に1万3653ヘクタール、坪数にして約4130万坪という広さの生産緑地があるとされています。
東京ディズニーランドとディズニーシーを合わせるとちょうど100ヘクタールほどですので、その136倍の広さの生産緑地が全国にあるんだという事が分かります。

参考:国土交通省「平成26年都市計画現況調査」

1都3県の生産緑地の面積

では、1都3県ではどのくらいの生産緑地があるのでしょうか。
上記のディズニーリゾートとの比較をしながら見てみましょう。

東京都:3240ヘクタール(ディズニーリゾート32個分)
埼玉県:1769ヘクタール(ディズニーリゾート18個分)
千葉県:1153ヘクタール(ディズニーリゾート12個分)
神奈川県:1360ヘクタール(ディズニーリゾート14個分)

参考:九都県市首脳会議 環境問題対策委員会「九都県市の保全緑地の現状」

意外なことに、かなり広く生産緑地として指定された土地があるのがお分かりいただけるかと思います。

地主が生産緑地の指定を受ける理由

では、そんな広大な広さのある生産緑地ですが、地主さんはなぜ生産緑地として指定を受ける事になるのでしょうか。
これは、固定資産税などの土地を保有していることで課税される税金を安くすることが主な目的となります。

生産緑地の指定を受けると節税になる?

生産緑地は所謂「農地」として扱われる事となります。
この農地として指定を受けると固定資産税が非常に安くなることから生産緑地にする地主さんが多くいらっしゃるのです。
そもそも固定資産税は「固定資産税評価額」と「税率」で算出されますが、宅地と農地の違いで固定資産税を算出すると、何倍、何十倍もの違いが出るのです。

となれば、当然、その土地を生産緑地として指定を受けてしまえば税金を安くできるということになるのですが、ご存知のとおり、実際に生産緑地の指定を受けていながら、何も生産していない土地は多くあります。
だからと言って生産緑地の指定を解除してどんどん宅地化を進めていけば環境の悪化に繋がる。
そんなジレンマがあるのも生産緑地なのです。

【関連記事】固定資産税・都市計画税の解説|不動産経営に役立つ税金のお話

2022年問題に良案!?政府が宅地転用を抑制する法改正に乗り出す

さて、そんな生産緑地についてですが、実は以前から「2022年問題」として各所で取り上げられていました。
理由は、生産緑地としての指定が30年と決められている事にあります。
つまり、2022年で30年という期限を迎える生産緑地が一気に解放されるため「膨大な農地が宅地化するのではないか」「大量の生産緑地が宅地化すれば不動産バブルが崩壊するのでは?」という懸念から、あちこちで騒がれるようになったのです。

生産緑地法改正の改正内容

しかしながら、2017年4月に生産緑地法改正の一部が改正され、以下のような緩和策が取られています。

生産緑地の面積要件を500平米以上から300平米以上に緩和。
生産に必要な建物のみの建設が許されていたが、農家レストランや野菜の直売所などが設置できるようになった。
30年という期限を10年ごとに先送りできるようにした。
田園住居地域の創設(つまり農家レストランや直売所が建てられる地域としての新たな地域区分)

また更に今回、以下のようなニュースも報道されています。

「農林水産省と国土交通省は、都市部の農地「生産緑地」を維持するための対策に乗り出す。地主の相続税を猶予したり、硬直的な土地の貸し借りの仕組みを柔軟にしたりして、企業やNPOが借りやすくする。市民農園などの形で活用を促す狙いだ。生産緑地の多くは2022年に期間満了を迎え、宅地転用が加速する恐れがある。東京などでは今後、緑地の保全が課題になる。」
 
引用:日本経済新聞 電子版「都市農地維持へ税優遇/「生産緑地」22年期限 農水・国交省、転用を抑制」

まとめ

昨今、「貸し農地」のビジネスをちらほらと見かけるようになりましたが、これらのビジネスが成り立っているという事は、農業に需要があるという事実ではないでしょうか。

温暖化という環境の変化、アパートの乱立、少子高齢化といった様々な事情が重なり、これまでの日本では見向きもされてこなかった農地に注目が集まっているというのは、過去を振り返ってみると大きな変化だと言えるかもしれません。

筆者としては、環境問題としてこの生産緑地のニュースを日ごろから気にかけてはいましたが、世間で何かと騒がれるとなると、政府も予めの策を講じるであろうとは考えておりました。
空き室問題については以前から政府も対策が必要であるという認識を示しておりましたし、虎視眈々と不動産デベロッパーが生産緑地を狙っているという事については、しっかり把握をしていたようです。

とはいえ、少なからず2022年を迎えた暁には、宅地化する生産緑地は間違いなく増えるでしょう。
それらを、いかに自然環境や周辺の住環境と調和する土地とするかは、土地の所有者だけではなく、開発をする企業側にも責務があると言えるのかもしれません。

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