東京オリンピックまであと3年!レインズに見る不動産需要のいま
2013年にオリンピックの招致が決定し、日本中が歓喜したのはまだ記憶に新しいところですね。
それ以来、インフラを始めとする各業界の需要増加が見込まれるという話題や、同時期に始められていたアベノミクス効果への期待感から、株、為替、不動産といった様々な資産への投資が加速しました。
東京五輪が決定してから、思えばもう4年が経過したわけですが、あの頃の活気と不動産市場の現況はどのようになっているのでしょうか。
今回は、東日本不動産流通機構レインズの発表するデータから、過去から現在までの中古マンション流通について見ていきたいと思います。
レインズとは?
まず、オリンピック招致に関する中古マンション市場についての考察の前に、東日本不動産流通機構レインズについて簡単にご説明させていただきます。
その名のとおり、主な目的は不動産の流通を促進させるために不動産会社同士で物件情報を公開、閲覧するためのシステムです。
これは一般的な不動産ポータルサイトとは違い、不動産業者しか扱う事は出来ないシステムで、国土交通省から指定を受けている業界ならではのシステムと言えます。
こういった、業界内でしか扱えないという事情から「隠し物件があるのでは?」という憶測で「レインズを一般人でも見られる裏ワザはありませんか?」という質問を見かける事がありますが、確かにIDやパスワードなどさえあれば閲覧はできます。
ただ、その行為は不正にあたる上に、レインズに登録されている物件を見たからといってとんでもない掘り出し物が見つかるという事もありません。
レインズの目的
レインズの使用目的は、不動産業者が広告出したり、来店客にそれらを紹介するという役割の為に使用されるものですので、レインズならではの素敵な物件があるという事ではないのです。
さて、そんなレインズですが、物件情報のネットワークを展開するだけではなく、不動産業界の取引動向についても調査を行い、その結果を公表しています。
今回はその中から、これから賃貸用のマンションを購入しようとお考えの方に参考になりそうな中古マンション市場の動向について見ていきたいと思います。
オリンピック招致が決定した頃の様子
東京オリンピックが決定したのは2013年9月の事。
その頃の首都圏の中古マンション市場はまさに低迷状態でしたが、具体的には以下のような状況です。
成約件数:3123件
レインズへの新規登録数:13935件
在庫数:38,484件
参考:東日本不動産流通機構レインズ「平成26年10月度 中古マンション成約件数が7ケ月連続前年比減」
オリンピックが決定したばかりで、需要の見極めはこれからという時期ですが、この後の推移も併せて見てみましょう。
2013年12月
成約件数:2900件
レインズへの新規登録数:12634件
在庫数:36249件
2014年3月
成約件数:3994件
レインズへの新規登録数:13696件
在庫数:34550件
2014年4月
成約件数:2785件
レインズへの新規登録数:13408件
在庫数:33909件
参考:東日本不動産流通機構レインズ「平成26年11月度 中古マンション成約件数が8ケ月連続前年比減」
ここまでの動きを見る限りでは、単なる時期的な需給の変化であろうという結果です。
12月には当然不動産取引件数は激減しますし、3月頃は引っ越しシーズン、決算期という事もあって売り急ぐ空気が流れるものです。
ただ、このあたりからちょっとした変化が現れます。
増え続ける在庫数と最新データ
2014年6月以降からですが、中古マンションの在庫数が徐々に増加してくることが下記のデータで確認する事ができます。
2014年6月
成約件数:2812件
レインズへの新規登録数:13415件
在庫数:33848件
参考:東日本不動産流通機構レインズ「平成26年12月度 中古マンション成約㎡単価の上昇率が拡大」
2015年6月
成約件数:3114件
レインズへの新規登録数:14945件
在庫数:34431件
参考:東日本不動産流通機構レインズ「平成28年01月度 中古マンション・中古戸建住宅とも成約件数が4ケ月連続で前年を上回る」
2016年6月
成約件数:3069件
レインズへの新規登録数:15749件
在庫数:41253件
参考:東日本不動産流通機構レインズ「平成29年01月度 中古マンション成約件数が5ヶ月連続前年比増加、中古戸建住宅は減少」
2017年6月
成約件数:3333件
レインズへの新規登録数:16079件
在庫数:42135件
参考:東日本不動産流通機構レインズ平成29年07月度 中古戸建住宅の成約件数が4ヶ月連続で前年比減少、中古マンションは増加」
2014年から在庫数は増え続けており、現在では2014年から見ると1万件増の4万件を超える物件が在庫物件として残ったままになっています。
これは、明らかにオリンピック招致を起点とした変化であり、そこにはやはり理由があるはずです。
㎡単価が3割も高くなっている現状
では、中古物件の取引件数とは別のデータを見てみたいと思います。
レインズでは、上記までにご紹介させていただいた成約数や在庫数から、㎡単価を調査して公表しています。
リンク先は上記と同じものですが、以下のようになっています。
2014年6月
成約件数:42.52万円
レインズへの新規登録数:44.61万円
在庫数:44.56万円
2015年6月
成約件数:45.33万円
レインズへの新規登録数:50.45万円
在庫数:48.55万円
2016年6月
成約件数:47.77万円
レインズへの新規登録数:55.34万円
在庫数:56.12万円
2017年6月
成約件数:49.61万円
レインズへの新規登録数:54.82万円
在庫数:57.00万円
このデータで見るべきは、在庫数における㎡単価ではないでしょうか。
2014年の44.56万円に対して、2017年は3割も単価は上昇しています。
かといって、成約件数が落ち込んでいるかというと、上記までのデータを見ていただくとお分かりいただけるかと思いますが、単価が高くなったからといって成約件数が減ったという印象は受けません。
市場の心理を探るのは難しいところですが、オリンピック需要が終わるまでに、所有の物件を少しでも高く売ろうという動きがあるのではないかと推測され、単価は上がるが在庫数は増えるばかり、かといって成約数が増える事もないという、食品や家電量販店などでありがちな発注ミスでもしたかのような様相です。
実は始まってる!?不動産バブルの終焉
ここまで、レインズの公表しているデータから市場考察を簡単にしてみました。
この記事を執筆している2017年に入ってからは、㎡単価の上昇は一旦収まったかのような状態です。
成約数はこれまでどおりながら、在庫数の上昇も落ち着きを見せてきた感はあります。
ただ、この事実は「不動産バブルの終焉」を予感させるものでもあり、各メディアでも同様に、オリンピックよりも少子高齢化に伴う不動産余りについてピックアップしているものを多く見かけるようになりました。
新築物件というのは、よほどマーケティングを誤らない限りは、大体売れ去っていくものです。
となると、不動産市場を見極めるのには、「不動産」というそのものの需給判断のしやすい中古物件のデータから判断するのが良いとされています。
上記までのデータを見て、市場に対する見方は人それぞれかもしれませんが、メディアが騒ぎ始めた時は、上昇相場は終焉の時という投資業界での常識は、ここにも当てはまるのかもしれません。