団体信用生命保険とは?賃貸物件の所有が生命保険代わりに?
既に賃貸オーナーとして経営をされていたり、これから賃貸経営を始めようと投資物件を探している間に不動産会社の営業マンからこんな事を言われたことはありませんか?
「一つ物件を持っておけば、生命保険代わりになりますから」
はて、これはどういう意味でしょうか。
生命保険という動産に対して、建物や土地をメインとする不動産がどう結びつくのか考えてもよく分かりませんよね。
別の記事で「はじめての賃貸経営」について解説させていただいておりますが、実はその中で少しだけ触れた中に今回の生命保険代わりという営業マンの言う謎を解くカギがあるんです。
関連記事:賃貸経営のメリットとデメリットを解説「はじめての賃貸経営」
今回は、その「不動産が生命保険代わりになる」という一石二鳥を思わせるメリットについて解説させていただきます。
目次
アパートローン契約と同時に実は契約している生命保険
「賃貸経営が生命保険の代わりになる」という言葉を聞いて、こんな風に思われた方はいらっしゃいませんでしょうか。
「自分に万一のことがあっても不動産が残るから、それを売却せよという話では?」
確かに、そうとも言えるかもしれませんが、どちらかというとそれは、相続に関するお話に寄るべき内容になります。
今回のお話のカギとなるのは、アパートローンを組む際に加入する「団体信用生命保険」です。
団体信用生命保険とは
団体信用生命保険を簡単にご説明させていただくと「ローンを組んだ本人が死亡、高度障害になった時に、残債を支払ってくれる保険」です。
つまり、自身に何かあった時には団体信用生命保険によって残債が無くなり、価値ある物件がそのまま残るという事から「生命保険代わりになる」と言うセールストークが存在するのです。
実際、これは単なるセールストークに留まらず、実際にそのような事例もありますし、人によっては家賃収入を故人に代わって受け取れるようになるため「遺族年金代わりに」という考え方に変換して経営されている方もいらっしゃいます。
団体信用生命保険の保険料は?
ではこの団体信用生命保険ですが、保険料はどのくらいになるのでしょうか。
ローンを組むときに初めてその存在を知ったという方もいらっしゃるかもしれませんので、予め保険料については知っておいた方が後々に不安になる事もないでしょう。
まず、一般的な生命保険とは違い、団体信用生命保険は債務者に万一があった際のローンという債務に対して保険を掛けるようなものですから、やはり債務額によって保険料には差が出てきます。
年間の保険料をシミュレーション
仮に、住宅金融支援機構のフラット35のホームページにある「機構団信特約料シミュレーション」にて、年間の保険料を以下のような条件でシミュレーションしてみました。
借り入れ期間:30年
金利:1.66%(元利均等)
その他:オプション等無し
1年目 10万7,300円
2年目 10万5,000円
3年目 10万2,100円
4年目 9万9,200円
・
8年目 8万6,900円
9年目 8万3,700円
10年目 8万500円
・
・
25年目 2万4,500円
26年目 2万300円
27年目 1万5,900円
28年目 1万1,500円
29年目 7,000円
30年目 2,500円
参考:住宅金融支援機構「機構団信特約料シミュレーション」
最も高い1年目で10万7000円ですから、月に直せば「9000円弱」という事になります。
その後は徐々に保険料が安くなっていくわけですから、この保険料を高いか安いかで結論付けるとするなら、間違いなく「安い」と言える金額です。
では一般的な生命保険と比べてみると、生命保険文化センターが公表している「生命保険の世帯年間払込保険料」によると、最も多い年間払い込み保険料の相場として「12~24万円」という結果が出ており、次いで「12万円以下」「24~36万円」となっています。
対する加入されている保険金額で最も多いのが「500~1000万円」「2000~3000万円」となっています。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター「平成27年度 生命保険に関する全国実態調査」
当然、一般の生命保険であれば商品により払込額や条件などは違ってきますが、上記の比較を受けて明らかなのは「生命保険代わりになる」という言葉が決して嘘や誇張ではないという事。
少なくとも、一般の生命保険よりもお得に運用できる保険の一つになるのは間違いありません。
団体信用生命保険で注意したい事
さて、ここまでをお読みいただいて、不動産会社の営業マンの言う「生命保険代わりになりますよ!」の意図がおおよそご理解いただけたかと思います。
ただ、「じゃあ今の生命保険を解約してしまっても問題ないね!」と言えるかというと、全くそんなことはありません。
団体信用生命保険は、あくまでも死亡や高度障害の際に補償が受けられる保険です。
つまり、ケガや病気などでは保険金は支払われないのです。
団体信用生命保険加入の目的
そもそも、金融機関が団体信用生命保険への加入を促す理由は、債務者との話ができなくなったとしても債権を回収できるようにすることが目的ですので、債務者の経済事情を安定化させることを目的とはしておりません。
団体信用生命保険と、民間の生命保険については完全に分けて考えておく必要があります。
保険料は金利に含まれている
また、保険料の支払方法についてですが、民間の住宅ローン等であれば団体信用生命保険の保険料は金利に含まれていますので、毎月の返済と同時に保険料も支払われている事になります。
つまり、わざわざ自身で「保険料払わなきゃ!」と慌てる事もないのですが、フラット35の機構団体信用生命保険特約については、別途保険料の払い込みが必要となります。
団体信用生命保険まとめ
とはいえ、デメリットよりもメリットについて語られることの多い団体信用生命保険。
誰が言い出したのかは分かりませんが、賃貸物件を持つ事のメリットとして「生命保険代わりに!」「将来の年金代わりに!」なんて上手い事を言ったものだと感じさせられます。
過去に、保険料未払い事件や年金記録消失問題などが世間を騒がせましたが、筆者としてはその頃から賃貸物件を一つの資産形成として活用できるとメディアが取り上げ始めたように記憶しています。
「確実な収益を生む投資」としての考え方ももちろんですが、こうした生涯設計の一部として賃貸経営を考える事にも少し時間を費やしてみるのも決して無駄にはならないでしょう。