立ち退き交渉における10の心得|賃貸オーナーを悩ませる立ち退き交渉③

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立ち退き交渉のシリーズの最後となりますのが、実際の立ち退き交渉の流れやポイントについてです。

前回の記事では、立ち退き料をメインとして解説させていただきましたが、立ち退き料についていきなり法的根拠を持ち出すことは、交渉の際に相手の気持ちを逆撫でする事にもなりかねないと申し上げました。

それまで安定して平穏な暮らしをしていたところに、立ち退きを持ちかけられるのですから、交渉は慎重、且つ誠意をもって行っていきたいところです。

今回は、そんな立ち退き交渉のコツなどを含め解説させていただきたいと思います。

立ち退きの前提は契約の解除要件にあり

ここまで、立ち退きという言葉でご説明させていただいておりましたが、正確には「賃貸借契約の解除」に該当する事になります。
よって、ここでも借地借家法を確認する必要があります。

借地借家法の第26条には以下のような条文があります。

「建物賃貸借契約の更新等」
 
・建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
 
・前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
 
・建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
 
引用:e-gov「借地借家法」

更にこれに加え、前回の記事でもご紹介させていただいた、第28条の条文も重要です。

「建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
 
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは
(中略)
建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
 
引用:e-gov「借地借家法」

つまり、老朽化による建て替えや自己の居住といった正当な事由のために、借主に賃貸借契約の解約、または契約更新をしないとするなら、その6カ月~1年前という期間内に必ずその旨を通知する必要があるという事を言っているのです。
「大家さんから立ち退きと言われたら、半年前に言われていないと無効なんだよ!」なんて話をお知り合いから教えてもらった方もいらっしゃるかもしれませんが、上記の条文がまさにそれなのです。

立ち退き交渉の流れ

さてでは、立ち退きには少なくとも6カ月以上前からの事前通知を行う必要があるわけですが、どのような方法で立ち退き交渉をしていけばよいのでしょうか。
立ち退き交渉で最低限行う必要があるのは、時系列順に以下の内容となります。

1、立ち退きの通知を個人の手紙として送る

やはり、いきなり法的根拠を示すよりも、個人宛に賃貸人が私信を送るという行為が円満に立ち退き交渉を進めていく上で重要であると言えます。
手紙に書く内容として「立ち退き期限」「立ち退き請求の理由」「立ち退き料について」「挨拶とお詫び」といったあたりは必ず記載し、必要があれば他の事項も記載しておきましょう。

2、立ち退き料の交渉

私信を送った後は、実際の立ち退き料について交渉していく事となるわけですが、立ち退き料の目安等については前回の記事をご参考にしていただきつつ、あくまで相手の立場になって「こちらの都合で大変申し訳ないのですが」「お引越しや新居探しはできる限りお手伝いしますので」という姿勢を見せる事が重要です。

3、新居の斡旋や物件探し

もし複数の物件を所有しており、近所に似たような条件の賃貸物件をお持ちであれば、そちらを勧めてみるのも良いかもしれません。
空き室となっていた部屋に入居者が入る事になりますし、家賃を多少下げてあげるなどの配慮ができるようであれば、交渉もwinwinになるでしょう。
もし他に所有物件が無いにしても、少なくとも管理会社と連携して物件探しを手伝ってあげるといった事などはすべきかもしれません。

以上が立ち退き交渉で行う主なこととなりますが、初めての立ち退き請求であれば、上記のように簡単に説明されてもピンとこない部分もあるでしょう。
続いては、立ち退き交渉で最低限は心得ておきたい事をご紹介させていただきます。

立ち退き交渉における10のポイント

立ち退き交渉は場合によって、完全な物件の明け渡しが行われるまでに苦労の絶えないものになるかもしれません。
そこで、以下のようなことを心がけておくと良いでしょう。

日ごろから入居者と良好な関係を築いておく
借地借家法などの法律関係の知識を深めておく
交渉の際の協力者を見つけておく
冷静に判断できる心構えを持つ
交渉の内容と応酬話法を予め決めておく
相手の状況を把握しつつ気持ちを考える
交渉の際の記録は逐一残す
司法書士や弁護士に依頼するのはできるだけ避ける
「〇か月以内に退去すれば立ち退き料を上乗せする」などの相手にとってのメリットを提示する
立ち退き料は立ち退き前よりも立ち退き後に支払うようにする

改めて申し上げますが、立ち退きをスムーズに進めるためには「交渉」をいかに円満に進めていくかが重要になりますので、法的な話をいきなり持ち出すのは状況を悪化させる可能性があります。
上記の心得にもあるように、司法書士や弁護士へ相談したとしても、それを盾にするような話はご法度ですし、送る書類がいちいち内容証明では相手の気分を間違いなく害するでしょう。

そういった意味も含めて、日ごろから入居者と良好な関係を作っておき、1人で頑張りすぎるのではなく協力者を見つけ、常に冷静に判断できるようにしておくことが立ち退き交渉では大事なことになるのではないでしょうか。

まとめ

3回にわたって立ち退き交渉について解説させていただきました。
不動産のお話となると、ケースバイケースであることがほとんどですので、これまでに解説させていただいたことを行えば全て丸く収まるという事でもありません。
しかしながら、最低限押さえておきたい知識としては立ち退き交渉の今回のシリーズは是非参考にしていただきたいものでもあります。

入居者が安心の暮らしを確保する上でも、オーナー様の賃貸経営を円滑に進めていく上でも、立ち退きという話はどうしてもネガティヴになりがちではあります。
少なくとも、賃貸経営における不動産知識が凝縮されているのも立ち退きに関する事でもありますので、ネガティヴに考えすぎず、「経験と知識を得るため」というように、プラス転換してみると良いかもしれません。

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