建て替えの費用について。老朽化マンションってどうなるの?

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四谷コーポラスの建て替えに見る老朽化マンション建て替えへのプロセスですが、前回はまず、建て替えが必要と判断された場合は委員会の設置やメンバーの選出、現住人の立場になって丁寧な説明が必要であるとお話させていただきました。

前回記事:マンション建て替えの検討から決定まで。老朽化マンションってどうなるの?

また、区分所有法により4/5以上の合意が得られなければ、建て替えはできないと定められているともご説明させていただきました。
よって、現住人からの合意を得るためには、この建て替えにかかる費用がどのくらい必要になるのか、併せて、現住人へ費用負担をどの程度求めていくかといった話が大変重要なものになるでしょう。

今回は老朽化マンション建て替えの「費用面」について見ていきたいと思います。

建て替え費用の過去の事例

まず、マンションを建て替える事になった際に、住人が負担する額にはどのようなケースがあるのでしょうか。
シリーズの1回目の記事でもお話させていただきましたが、場合によっては建て替え時の自己負担額が0円というケースもあります。
ではここで、実際にあった事例やプランをご紹介させていただきます。

実際の建て替え事例

最初にご紹介させていただくのは、「東京都大田区蒲田のマンション」です。
キッカケとなったのは、当初予定していたマンションの耐震工事や給水、排水管の修繕工事の費用が多額になったことでした。
住人から「建て替えをしたらコストはどのくらいになるのか」という意見があったため、下記のようなプランが作成れる事となりました。

(建て替え前)
・築年数38年
・20戸
・地上4階建て
 
(建て替え後)
・29戸
・地上5階建て
 
(住人負担額)
約500~1500万円
 
参考:あなぶきハウジンググループ「マンション建替え検討事例紹介①東京都大田区蒲田」

建て替え後は9戸増えるプランとなりましたが、日影規制等の問題からこれ以上高いマンションの建築が難しい上に、床面積を減らしてでも戸数を増やさなければならず、そこまでしたとしても持ち出し金が発生するという事から建て替えは実現しませんでした。

持ち出し費用が発生しない建て替え事例

では逆に、持ち出し費用が発生しないケースも見てみましょう

(建て替え前「天城六本木マンション」)
・築年数28年
・9個(内、事務所等1戸)
・地上8階地下1階
 
(建て替え前「ホーマットガーネット」)
・築年数28年
・30戸(内、事務所等6戸)
・地上8階地下1階
 
(建て替え前「天城アネックスビル」)
・築年数24年
・地上3階
・事務所等1戸
 
(建て替え後「アトラスタワー六本木」)
・地上28階地下2階
・91戸(事務所等1戸)
・住戸面積:約50~155㎡
 
(住人負担額)
無し
 
参考:一般社団法人マンション再生協会

こちらは、マンションと事務所の混在する3棟の建物を地上28階、地下2階の1棟のマンションに再建した事例です。
32戸の区分所有者のうち28名が再建したマンションを取得しました。

「一般社団法人マンション再生協会」の参考事例として記載されていますが、建て替え後の戸数が増えたことにより、建て替え前と同等の床面積に対して、仮住居や移転費用などを含めたそれまでの住人の費用負担は無しで再建されました。

容積率次第ではタダになる!?

上記の2例を見ていただいてお気づきの方も多いかと思いますが、つまりは周辺環境とその土地の容積率により、戸数が増やせるかどうかがマンションを再建築をするためのネックとなってきます。

続く記事にて詳しくご説明させていただこうと思いますが、住人負担を無くして建築できるケースはそう多くはなく、場合によっては数千万円かかるというケースもあるため実際には建て替えを断念するケースの方が多いと言われています。

「容積率」については以前に別の記事にてご説明させていただいておりますが、「その土地の面積に対して建設可能な延床面積」のことです。

関連記事:建ぺい率、容積率とは?計算方法をわかりやすく解説

仮に敷地面積600坪(約2000㎡)で容積率300%の土地だったとすると、1800坪、つまり6000㎡の延べ床面積までの建物が建てられる事になります。

ここで、「ということは、各階6000㎡の3階建てまでの建物を建てられるということ?」と思われるかもしれませんが、実際にはそうではありません。

容積率と併せて大事な建築要件には「建ぺい率」という敷地に対する建物の割合を定めたものもあり、広くても60%が良いところです。
この容積率と建ぺい率で再度、どのような建物が建てられるか計算してみましょう。

600坪 × 建ぺい率60% = 360坪
360坪 × 容積率300% = 1080坪(3564㎡)
1080坪 ÷ 360坪 = 3階建て

このように、容積率だけでは延床面積を出す事ができないのですが、上記の例では3564㎡の3階建てのマンションが建てられるという事なりますが、仮に共有スペースを無視して住戸だけで考えると、各階12~15戸は作る事ができます。

当然、共有廊下や階段、エレベーター、ゴミ集積所、集合ポストルームなどを差し引いていけば、もっと戸数は少なくなるでしょう。

こういった計算を詰めながら現住人の世帯数とを比べた結果、建て替え後に戸数は増えるのか減るのか、また、1戸いくらで販売すれば建築費用がペイできるのか、そしてその価格は周辺のマンション相場と比較して妥当なものであるかといったことまでを全て計画して、初めて建て替え後も費用負担なしで入居できるのかどうかが決まってくるのです。

もちろん、容積率や建ぺい率といった計算だけで考えてしまうと机上の空論になる可能性も十分にあります。
周辺環境や用途地域による制限なども踏まえて計画し直してみると、「2階建てまでしか建築できない!」といったケースも考えられます。

みんなで積み立てた修繕金は建て替えに活用できる?

さてここまで、マンションの建て替え費用がタダになるのか多額になるのかは、一概に申し上げられないという事をご説明させていただきました。

ここで、こんな事にお気づきの方もいらっしゃるかもしれません。

「そういえば、修繕積立金はどうなるの?いくらかでも充当できるのでは?」

修繕積立金はマンションによってバラつきはあるものの、おおよそ5000~10000円程度です。
年額に直すと12万円ですから、各階10戸3階建てのマンションだとするなら360万円が毎年積み立てられていく事となります。

もし仮に、この修繕積立金を一切使わずに、四谷コーポラスのように60年を迎えたとするなら、2億円以上の積み立てができることになりますので、建て替え費用に充当するには是非とも頼りにしたいものと言えます。

ただこれは、一切修繕積立金を使用しなかった場合のお話であり、毎月、毎年行われる法定点検や実際の修繕を行っていく事を考えれば、当然上記のような都合の良い話にならない事はお分かりいただけるかと思います。

建て替えに修繕積立金を使用する事は原則で許されていない

更に、マンションを建てた当初からの管理規約のままだとすると更に困難が待ち受けています。
何故なら、国土交通省で参考とすべきとされている「標準管理規約」では、建て替えに修繕積立金を使用する事は原則で許されていないためです。

多くのマンションではこの標準管理規約を元に、マンションの管理規約を作成しています。
ただ、法律で修繕積立金を使ってはいけないと定められているわけではなく、マンションの管理規約を変更する事で修繕積立金を活用することも可能だと言われていますので、専門家や弁護士に相談しつつ、修繕積立金を建て替え費用に充当していくことを検討した方が良いでしょう。

マンション建て替えの「費用面」のまとめ

今回は少々長くなりましたが、次回は老朽化マンションの現状や今後の見通しなどについて見ていきたいと思います。
空き家問題や少子高齢化、耐震問題など様々な懸念が指摘される分譲マンションですから、この機会に自身に関係してくるかもしれない事としてお読みいただけると幸いです。

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