抵当権と根抵当権とは?違いをわかりやすく解説

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住宅ローンで借り入れを行い自宅の購入をしたり、空前の低金利と言われるアパートローンを組んで大家さんデビュー。
もちろん、銀行側も二つ返事でお金を貸してくれるわけではなく、担保として土地や家を差し出す代わりにローンを組んでくれるわけですが、そういった事実も不動産登記簿にもしっかり記載されているのをご存知、若しくは見たことはありますでしょうか?

登記簿の権利部を見ると「抵当権設定 〇〇年〇月〇日 金銭消費貸借契約」なんて書かれることになるわけですが、この手の書類を見慣れている方であれば「あーはいはい、住宅ローンね」と、大体の方は一目で分かることでしょう。

しかし、まれに「根抵当権」なんて書かれた登記簿を目にする機会があるのですが「根?」なんて思った経験があるのは筆者だけではないでしょう。
今回は「抵当権と根抵当権の違い」について解説させていただきます。

関連記事:登記簿謄本の読み方、見方を丁寧に解説

抵当権についておさらい

冒頭でも申し上げましたとおり、お金を借りて住宅などを建てるのですから、万が一債務不履行に陥った場合のために銀行には担保として土地なり建物なりを差し出す必要があります。

つまり、ローンの支払いが滞るようなことがあれば、強制的に土地が競売にかけられるということです。

「今月厳しいから1万円貸して!」なんてレベルの話ではなく、動くお金は数千万円にもなるわけですから、銀行側もそのくらいの覚悟をもって初めてお金を貸してくれるということなのです。

抵当権の法令

この抵当権ですが、法令では以下のように定められています。

(抵当権の内容)
第369条
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
 
(中略)
 
(抵当権の効力の及ぶ範囲)
第370条
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。
 
(中略)
 
第371条
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
 
引用:e-Gov「民法」

これらを不動産に絡めて分かりやすく言うのであれば、以下のようになります。

第369条
「その物件に債務者が住んだまま担保となっている不動産については、抵当権者は、他の債権者よりも優先的に返済を求めることができます」
 
第370条
「抵当権とは、その物件だけではなく、その物件に付随する物も抵当の範囲ですよ」
 
第371条
「抵当権のある不動産に、後から生まれた物も抵当の範囲とします」

371条における「果実」というのは、植物のことでもあり、金銭的な利益のことでもあります。

つまり、土地の所有者がローンの返済をしないまま、その後駐車場として土地貸しを始めたとしたら、その賃料も債権者のものとなるということを指します。

抵当権とは、単に「物件を不動産にするから、お金貸してください」というだけの話ではなく、実は以上のような細かい決まりがあるのです。

根抵当権とは?

さて、抵当権と名前が一文字違いであるだけの「根抵当権」とは一体何なのでしょうか。

根抵当権とは「極度額を決めた抵当権」

「根」と付くだけに、抵当権をさらに深く掘り下げた複雑な内容のように思えますが、実は全く仕組みが違います。

お金の貸し借りという点では同じなのですが、根抵当権とは「極度額を決めた抵当権」と言うことができます。

ただ恐らく、この説明だけではほとんどの方が理解できないかと思いますので、一つの例にてご説明させていただきます。

抵当権の流れ

まず抵当権の場合ですが、お金の貸し借りは以下のような流れで成立します。

(1)家を建てるためにお金を貸してほしい
(2)銀行はお金を貸す代わりに抵当権を設定
(3)地道に返済を行い完済する
(4)銀行は抵当権を抹消

これは多くの方がご理解いただいていることかと思います。
では根抵当権はどうでしょうか。

根抵当権の流れ

(1)会社を大きくするためにビルを建てたいが、事業融資も受けたい
(2)銀行はお金を貸す範囲と根抵当権を設定して融資を行う
(3)自社ビルを建てて事業の拡大をしたおかげで利益は倍増したため借入を完済
(4)根抵当権はそのままに、次の事業のために再度同じ銀行から融資を受ける
(5)その事業も成功したため完済。続く事業もすぐに開始したいため同じ銀行に3度目の融資依頼
(6)繰り返し

抵当権の抹消があるかないか

抵当権の時と違って、何故か会社の話が出てまいりましたので、分かりづらくなったかもしれませんが、お金の貸し借りの流れの中での一番の違いは「抵当権の抹消」があるかないかです。

根抵当権の場合、借入の完済をしましたが、途中で根抵当権の抹消という手続きをしないままに再度融資を受けています。

実は、抵当権と根抵当権はここが違うのです。

民法の第378条では「抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。」と定められていますが、要は「借入を完済したら、抵当権は消滅します」と明確に言っているのですが、根抵当権にはそういった定めがありません。

つまり、根抵当権は借り入れがあろうがなかろうが、設定されたものをお互いに消滅させようという意思の下で抹消の手続きをしない限りは、存在し続けることになるのです。

引用:引用:e-Gov「民法」

根抵当権の存在する理由

さて、根抵当権は借入がなくなったにも関わらず存在するのですから、債務者にとっては非常に厄介なものに思えます。

ただ、果たしてそう言いきれるでしょうか。

先ほど挙げさせていただいた抵当権と根抵当権の違いの例についてですが、根抵当権のお金の貸し借りの時には突然会社が主役となりました。

つまりは、会社として銀行から融資を受ける場合には、根抵当権が大活躍してくれる可能性があるのです。

根抵当権のご説明の際に「極度額を決めた抵当権」と申し上げましたが、根抵当権はまさに「ここまでの金額なら貸してもいいですよ」という極度額を決め、その担保として不動産などを差し出すものであり、しかも普通の抵当権と違って、借入を完済しても根抵当権は抹消されずに残りますから再度融資を受けることが可能になるのです。

もちろん、普通の抵当権でも「家を建て直したいから再度融資を受けたい」と言えば、場合によって融資を受けることは可能です。
ただ、再度登記費用や手続きが必要になるわけですから、もしこの流れが個人宅の不動産ではなくビジネスにかかわる話であった場合に、非常に煩わしく、費用も無駄になってしまいます。

その為、根抵当権というものを設定しておけば、登記設定だの抹消だのということを気にせずに、銀行との融資相談がスムーズになるということになります。

いかがでしょうか。
根抵当権についてだいぶクリアになってきたのではないでしょうか。

ただ、やはり根抵当権は先ほど申し上げたとおり、自然と消滅するものではありませんので、事業とは違う不動産を扱う際には十分注意が必要です。

根抵当権を抹消するには、双方での話し合いや、当然債務を無くしていることが前提となりますし、もし根抵当権者と連絡が取れなくなった場合は、訴訟を起こして裁判所の判断にて抹消してもらう必要も出てきます。

とはいえ、個人の住宅ローンや、事業計画を立てて不動産経営をメインにして事業の拡大を狙うということでもない限りは、ほとんどの場合に普通の抵当権が設定されます。

稀に見かける根抵当権という存在も、知っておいて損はないと言えるでしょう。

抵当権と根抵当権のまとめ

不動産に限らずですが、法律用語には似て非なるものというのが非常にたくさん存在します。
上記の「果実」というものについても、「天然果実」「法定果実」というもので分けられ、自然に生まれた野菜や卵、石炭といったものを天然果実と言うのに対し、法廷果実というのは金銭的なものを指します。

ちょっと名前が違うだけで、権利関係に大きな影響を及ぼすのが法律というものですから、もし「あれ?こんな名前だったかな?」なんて思う法令名を見た時には、ちょっと立ち止まって、どんな権利や法令なのかといったところは確認したほうがよいでしょう。

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