特定優良賃貸住宅「特優賃」とは|不動産オーナーから見た特優賃
これまでに、「サブリース契約」という家賃保証制度についての記事にて様々なトラブルやニュースを取り上げましたが、2016年に家賃減額の可能性については契約前に説明義務を課すという法改正が行われたものの、未だサブリース問題について取り上げるメディアが多くあります。
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すっかりイメージの悪くなってしまった家賃保証制度ですが、もしこれが、自治体や国が家賃を保証してくれるものだとしたらどうでしょうか?
「民間と違ってトラブルが少なさそう!」なんて思われる方も多いかもしれませんが、実際に存在する国や自治体による家賃保証や建築費用の補助が受けられるかもしれない制度として、「特定優良賃貸住宅制度」というものがあります。
ただ実は、特定優良賃貸住宅の制度も難解な部分が多く、不動産オーナー様にはあまり理解が広まっていないのも事実。
今回は、あまり語られることがない、不動産オーナー様側から見た特定優良賃貸住宅について簡単な解説をさせていただきます。
特定優良賃貸住宅とは?
「特優賃」という名前をお聞きになったことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、不動産業界に関わる方であれば当然のように知っているものです。
特優賃は一体どのような制度なのでしょうか。
特優賃の仕組み
特優賃の仕組みを簡単に申し上げるなら、「一定の基準以上の賃貸住宅の建設を促し、中堅所得者に供給しつつ家賃の補助を行う」というものです。
この「家賃の補助」という部分ですが、入居者サイドから見た時の家賃補助として広く認知されていますが、実は、仮に不動産オーナー様が特優賃の物件を所有していた場合においても補助が受けられる可能性があります。
正確に申し上げるなら補助というよりも「住宅供給公社による借り上げ」「賃貸オーナーへの家賃減額分の補助」という方が正しいかもしれません。
家賃だけではなく、建設に関わる費用の補助が受けられる事もあり、賃貸オーナー側と入居者側の両者にとって嬉しい制度と言えるでしょう。
尚、特優賃はファミリー向けの賃貸住宅の供給を図るものですので、単身者用についてはほぼ皆無です。
稀に、他の制度で単身者への家賃補助を行っている地域もあるようですが、特優賃とは違う制度のお話になりますので、こちらでは割愛致します。
特定優良賃貸住宅として経営する方法
この特優賃ですが、不動産オーナー様であれば誰でも特優賃の物件を持つ事ができるのでしょうか。
これは地域による住宅事情や制度の違いにより判断が分かれますので、一概に回答を出す事が難しいものになります。
また、物件の所有者から見た特優賃について解説されているサイトや記事、書籍といったものが非常に少なく、個人が判断するには難解な点が多いと言えます。
ただ少なくとも「誰でも特優賃物件を持てる」ということではないのは間違いありません。
そもそも、特優賃となる物件をお持ちの不動産オーナーを積極的に募集している自治体すらほとんどなく、どのような条件や手続きが必要かといった詳細を広報している自治体もないという事は、不動産オーナーから見た特優賃の理解が深められない理由に繋がっていると言えるかもしれません。
よって、もし特優賃としての賃貸経営をお考えなのであれば、まずは各自治体の管轄の課へ問い合わせる必要があることは把握しておきましょう。
とはいえ当然、特優賃について何も決まっていないわけではありません。
特優賃については「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」にて以下のように定められています。
「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」
第二条
賃貸住宅の建設及び管理をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、当該賃貸住宅の建設及び管理に関する計画を作成し、都道府県知事の認定を申請することができる。
引用:e-Gov「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」
つまり、建築から賃貸に至るまでの「経営計画」を作成して都道府県知事に申請を行う必要があり、認定を受ける事ができれば特優賃としての賃貸経営ができる事になります。
また、先に申し上げた家賃保証や建設費用の補助についても、以下のように明示されています。
(建設に要する費用の補助)
第十二条 地方公共団体は、認定事業者に対して、特定優良賃貸住宅の建設に要する費用の一部を補助することができる。
2 国は、地方公共団体が前項の規定により補助金を交付する場合には、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、その費用の一部を補助することができる。
(家賃の減額に要する費用の補助)
第十五条 地方公共団体は、認定事業者が、認定管理期間において、入居者の居住の安定を図るため特定優良賃貸住宅の家賃を減額する場合においては、当該認定事業者に対し、その減額に要する費用の一部を補助することができる。
2 国は、地方公共団体が前項の規定により補助金を交付する場合には、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、その費用の一部を補助することができる。
引用:e-Gov「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」
このように、都道府県知事から認定を受けた特優賃は、建設費用や減額分の家賃を国や自治体からの補助を受ける事ができるとなっていますので、とにかくは知事からの認定さえ受けることを最重要事項として考えていく必要がありそうです。
特優賃の認定を受けるための建築条件
では、知事の認定さえ受けられれば晴れて特優賃としての賃貸経営ができる事となるわけですが、先に申し上げたとおり、主にファミリーの住宅用として供給されるものであって、建物自体も一定の基準をクリアする必要があります。
この建築物の基準も情報が非常に少ないのですが、関東圏以外の自治体により公表されている情報を確認すると、以下のような条件は共通しているようです。
一戸当たりの面積:50~125㎡
構造:耐火、準耐火の構造で、共同住宅または長屋建てである事
設備:専用のトイレ、浴室、キッチンがある事
他にも、敷地面積が1000㎡以上を基準としている地域もあるようですが、これは地域の土地の事情により実現の難しいものもあるかと思います。
つまり、上記の基準をベースとして、他に追加項目があるかどうかはやはり地域管轄の課へ確認された方が良いでしょう。
特優賃まとめ
さて、不動産オーナー様から見た特優賃について解説させていただきました。
先ほども申し上げましたとおり、一般に公開されているような情報は非常に少なく、自身で特優賃を経営していこうと思ったなら、まずは住宅供給公社や都道府県の住宅課や建築課といったところに相談し、協力して話を進めていく必要がありそうです。
ただ、ここでお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、最初にお話させていただいた「家賃保証」や「借り上げ」といったところがまだ不明確なままです。
今回は一旦、特定優良賃貸住宅の概要とさせていただき、次回改めて東京都の特優賃についてということで併せて解説させていただきたいと思います。